パナソニックの生産技術本部は、東北大学が研究開発を進める新ナノ結晶合金「NANOMET」を用いたモーターを搭載した圧縮機の試作に成功したと発表した。電磁鋼板を使用したモーターと比較して3.1%の効率向上を実証。これにより、圧縮機の高い省エネ性能を実現できるという。
パナソニックの生産技術本部は2016年2月25日、東北大学が研究開発を進める新ナノ結晶合金「NANOMET」を用いたモーター搭載圧縮機(コンプレッサー)の試作に成功したと発表した。
パナソニックによると、従来の電磁鋼板を使用したモーターと比較して3.1%の効率向上を実証。同モーターを搭載した圧縮機の性能を表す成績係数(COP=冷凍能力/消費電力)も、現行品と比較して2.9%向上した。これにより、「世界最高水準」(パナソニック)のモーター効率、圧縮機の高い省エネ性能を実現できるという。
新ナノ結晶合金NANOMETとは、東北大学「東北発 素材技術先導プロジェクト」の超低損失磁心材料領域が開発する軟磁性材料である。高鉄濃度Fe-Si-B-P-Cu合金で希少金属を含まず、10nm程度の均一なナノ結晶構造を持っている。これにより、高飽和磁束密度と低鉄損を実現。あらゆる分野で電力効率の改善が求められる中、モーターやトランスなどの強磁場を必要とする用途で活躍が期待されている。
2009年の資源エネルギー庁のデータによると、一般家庭の消費電力の4分の1が冷蔵庫やエアコンなどの冷熱機器だ。冷熱機器の消費電力を下げるには、基本部品である圧縮機の性能が鍵になるという。従来は、数十年にわたって主に活用されてきた電磁鋼板の材料特性改善により、損失低減が図られてきた。
しかし、「京都議定書成立に基づく『トップランナー方式』をはじめ、エアコンや冷蔵庫などの一般家電に厳しい省エネルギー達成目標が求められている。そのため、材料革新によるブレークスルーが必要だった」(パナソニック)と語る。そこで、NANOMETをモーターに適用するため、2013年11月から東北大学との共同研究が始まった。
パナソニックは東北大学と研究開発を進め、2014年12月にNANOMETを活用した直径70mm/高さ50mmの小型モーター試作を発表している。試作したモーターは、電磁鋼板のモーターと比較して鉄損を70%減、高飽和磁束密度を実現。残りは、実際の製品へ応用したときの省エネルギー効果を実証することが、これまでの課題だったとしている。
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