IngenuとLoRa Alliance、Sigfoxは、「Mobile World Congress(MWC)2016」(2月22〜25日、スペイン バルセロナ)において、競争が激しい「LPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク」の分野でそれぞれパートナー契約を締結したと発表した。携帯電話通信業界では現在、競合するIoT規格の争いを終わらせるための取り組みが加速しているところだが、こうした中、LPWAネットワークの分野では、IoT接続をめぐって競争が繰り広げられている。
Ingenuは既に、25か国の企業に向けて、同社の2.4GHz技術をベースとしたネットワークを導入するためのライセンスを供与したという。またLoRa Allianceは、ARMとドイツのサービスプロバイダーとの間で、900MHz帯ネットワークに関するパートナー契約を締結している。そしてSigfoxは、同社の900MHz帯ネットワーク上で計120万台以上の認定デバイスを動作させる契約を2件締結したという。
現在、LPWAネットワークを手掛ける数多くの競合企業が、アンライセンス周波数帯の隙間を埋めるべく競争を繰り広げているが、携帯電話通信プロバイダーたちは、2016年中に新しい規格の策定が予定されていることから、このようなアンライセンス周波数帯を、免許が必要な周波数帯域に取り込もうとしているところだ。LPWAネットワークは、現在まだ初期の段階にあり、その性能や初期ユーザーなどに関する詳細がほとんど明かされていない。英国の市場調査会社であるMachina Researchによると、2015年におけるLPWAネットワークへの接続台数は3倍以上に増加したものの、その数自体は2320万台と、それほど大きくはないという。
Ingenuは2016年9月、新たにJohn Horn氏をチーフエグゼクティブに迎え、社名を従来のOn-Ramp WirelessからIngenuに変更したところだ。それまで同社は、プライベートネットワークの構築を手掛けてきたが、戦略を変更し、IoT向けパブリックネットワークの構築に取り組むようになった。同社は現在、専用ASICをベースとした独自開発のRandom Phase Multiple Access(RPMA)技術を用いることで、世界各国において38のプライベートネットワークを構築している。RPMAは、同社の創設者たちが開発した技術で、その開発メンバーの中には、かつてQualcommのエンジニアだった者もいるという。
Ingenuはここ数週間の間に、オーストラリアや中国、ニュージーランド、フィリピン、南アフリカ、タイ、アラブ首長国連邦、その他18カ国との間で、全国ネットワークを構築する独占契約を締結したという。これらの中には、今後1年以内に、その国の総人口の少なくとも4分の1をカバーするとのことで合意したライセンシーもいるという。
Ingenuで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるLandon Garner氏は、「当社のパートナーの多くは、キャリアそのものではなく、バックホールプロバイダーやタワープロバイダー、技術インテグレーター、投資グループなど、キャリアとの関連を持つ企業だ」と述べる。
Garner氏は、今回の取引金額については一切明かしていない。ただし、同社は以前に、米国内で自社開発のRPMAネットワークの展開を加速すべく、シリーズCの投資ラウンドで資金を調達しようとしていたが、その当初の計画に取って代わるだけの金額は確保できたとしている。
Garner氏は「われわれは満足に値する収益を得ている」と述べた上で、ライセンスが何百万米ドルをも生み出したと付け加えた。同社は南米などの地域でさらに12〜15件のライセンス契約を結ぶことを目指しているが、飽和傾向が強く規制も厳しい欧州でパートナーを追い求めることはしていないという。
Machinaで主席アナリストを務めるAapo Markkanen氏は、「Ingenuの発表はこの領域にとって大きなニュースであり、グローバルな選択肢としての同社の地位を裏付けた。Ingenuは他のプレーヤーが推進するあらゆる取り組みと同様に、RPMAを開発者にとって信頼できる選択肢にするため、それらのライセンスを本当に確実なものにする必要がある」と述べた。
Ingenuは今後2〜3週間で米国アリゾナ州フェニックスとテキサス州ダラスでの公共IoTネットワークの構築を完了した後、全米の他の地域にその取り組みを広げることを目指している。最終的に、Ingeruは2016年末までに約600本のタワーを配備して全米人口カバー率70%に相当する30都市をカバーする計画である。
Ingenuは今後1〜2カ月でチップ、モジュール、システムに関連したパートナーの数を増やし、同社製のASICをベースにしたハードウェアを作ることも計画している。Garner氏は「われわれはハードウェアビジネスに長期間、携わりたくない」と述べた。
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