InfineonはMWC 2016において、同社の新型MEMSマイクを披露し、「現在市場に投入されている高性能MEMSマイクよりも約10dB高い最大音圧を実現できる見込みだ」と述べている。
Infineonでパワーマネジメント/マルチマーケット部門の責任者を務めるAndreas Urschitz氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「例えば、若者たちがロックコンサートに行く場合、映像だけでなく、オーディオにも高品質を求めるだろう」と述べる。
「InfineonのシリコンベースのMEMSマイクは、空港やコンサート会場の他、風が強い環境下など、騒音が非常に大きい公共の場でも、ユーザーの声をクリアに拾うことができる」(同氏)。
Infineonによると、同社のMEMSマイクは、デュアルバックプレートを採用することで、業界最高レベルの信号対雑音比(SNR)66dBを実現するという。ただし、アコースティックのオーバーロードポイントは135dBで、これは目立ったひずみが発生する音圧レベルだといえる。
Infineonの研究開発チームは、差動出力型のMEMSマイクを実現すべく、デュアルバックプレート技術を採用し、改良を重ねてきた。同社の広報担当者は、「対称出力が可能なため、高い音圧レベルでもほとんどひずみがない信号を提供できるようになり、無線干渉に対する堅牢(けんろう)性も高められた」と述べている。
一方、Vesperは、「当社のソリューションは、InfineonのMEMSマイクが採用している静電変換器の原理ではなく、圧電ベースの技術を採用する。このため、当社のMEMSマイクは本質的に、防水/防じんで、粒子に対する抵抗力を備える」と述べる。
同社のCEOであるMatt Crowley氏は、「スマートフォンのマイク用の小さな穴には、簡単に粉じんが入り込んでしまうため、信号損失の危険性がある」と指摘する。
さらに同氏は、「スマートフォンには、ノイズキャンセリング用のビーム形成ユニットの内部に、8個までのマイクを搭載できるマイクアレイがある。粒子が入り込んで、これらのマイクが1つでも故障すると、マイクアレイの故障率は90%に高まる場合もある。スマートフォンユーザーが抱える不満で最も多いのはスクリーンのひび割れだが、次に多いのがマイクの故障だ」と述べる。
またVesperは、圧電MEMSマイクの“オーディオズーム”機能についても説明している。この機能の搭載により、1つの音源だけに集中することが可能になるという。
Crowley氏は、「この他にも、圧電MEMSマイクの特徴としては、起動時間の速さと、デューティサイクルの高さが挙げられる。当社の圧電MEMSマイクは現在、“常時リスニングモード”を備えるが、2016年第2四半期に発表予定の次世代マイクロフォンには、“wake-on-sound機能”を搭載する予定だ」と述べる。
Infineonの広報担当者は、Vesperについて問われると、「当社は常に、新たな開発市場について調査を行っている。それと同時に、当社独自の目標を追求することにより、最高品質のオーディオと堅牢性、高いコスト効率を実現することが可能なソリューションを提供していく考えだ」と強調した。
こうしたInfineonの見解は、同社がこれまでに数十億個ものマイクを提供してきたという実績によって裏付けられている。広報担当者は、「当社の技術は、信頼性の高さによって実証されている」と述べる。
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