Appleのゼネラルカウンシル兼シニアバイスプレジデントを務めるBruce Sewell氏は、公聴会の中で委員会に対し、「Appleは、FBIの要請に対して真摯(しんし)に取り組んできたが、政府専用のOSを開発することについては原則的に協力できない。われわれが最も恐れているのは、このような未検証の機能が、犯罪者や敵国政府などの手に渡り、悪意を秘めたパンドラの箱が開いてしまう可能性があるということだ」と述べる。
Sewell氏は、「ソフトウェアツールを作成した場合、その影響は、特定の1台のiPhoneだけでなく、全てのiPhoneに及ぶ可能性がある。FBIはそのツールを、他の事件の先例として利用したいのだろう。われわれは、犯罪者やサイバーテロ、ハッカーとの間で激しい戦いを繰り広げている。当社のデバイスを使うユーザーに対し、ユーザー情報が不正アクセス/侵入を受けたり盗まれたりすることが絶対にないよう、安全性を実現するための取り組みを進めている」と述べる。
今回の公聴会では、AppleのiOSの“不可入性”が非難の対象となった。サンバーナーディーノの銃乱射事件の犯人が使っていた「iPhone 5s」のOSは、「iOS 9」だった。ニューヨーク郡地区検事長であるCyrus Vance氏は、「犯罪者たちはまさに今、われわれを笑いものにしていることだろう。技術メーカーには、自社製品を変化に順応させる義務がある」と指摘する。また同氏は、170件を超える他の事件に対して、オーバーライド技術を適用することができると主張する。しかし、ニューヨーク州治安判事が2016年2月29日、同州ブルックリンで発生した麻薬取引事件に関する裁判において、「All Writs Act(全令状法)」という法律に基づき、米国政府が、iPhoneのセキュリティ解除を命じる法的処置をAppleに対して強制することはできないとする判決を下したばかりだ。
Comey氏は、「オバマ政権では現在のところ、法整備を目指しているわけではないが、連邦政府向けに暗号化の解除方法が開発されれば、数百件に及ぶ事件を解決できる可能性が広がる」と付け加えた。また同氏は、「Apple対FBIの紛争に判決が下されれば、それが今後の事件の先例となるだろう。連邦議会は最終的に、今回の問題によって提示された、米国民のプライバシーとセキュリティに関する幅広い課題に対し、判断を下す必要に迫られることになる」と指摘する。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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