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半導体業界には新たなビジネスモデルが不可欠再び成長軌道に戻るために

M&Aが相次ぐ半導体業界では、低迷が懸念されている。市場の変化が従来以上に加速する中、半導体業界が勢いを取り戻すためには、これまでよりも利益を生み出しやすい、新たなビジネスモデルが必要だ。

» 2016年03月17日 11時30分 公開
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 半導体業界は、これまで半世紀におよび、持続的な拡大とイノベーションを実現してきたが、消費者動向や市場原理、イノベーションの速度などが変化する中で、その売上高と利益が目に見えて低迷している。また、企業統合も相次いでいることから、半導体業界が力を失いつつあるのではないかという懸念が高まる一方だ。

 米国の市場調査会社であるGartnerによると、2015年の世界半導体売上高は、前年比1.9%減となる3337億米ドルだったという。世界半導体市場統計(WSTS:World Semiconductor Trade Statistics)の予測では、2016年の世界半導体売上高はわずかながら1.4%増加し、3410億米ドルになる見込みだ。また、米国の投資会社であるMorgan Stanleyによると、半導体業界のIPO(新規株式公開)は、10年前には米国全体の25%を占めていたが、2015年にはわずか5%にとどまったという。

IoTは、利益を生み出せていない

 急速な進化を遂げているIoT(モノのインターネット)市場は、半導体業界の成長回復をけん引する「次なる目玉」として、大いに期待されている。しかし、半導体の開発コストが上昇し、利益も大きく減少する中、IoTはその最大限の可能性を実現できていない。もし今後、IoT市場が楽観的な展望に沿って拡大していくとしても、冷蔵庫の温度や、都市部の駐車スペースの利用状況などを監視するための、1米ドルのセンサーチップを開発/製造することで、大きな利益を生み出せるとは考えにくい。

「オープンソース」と「再プログラム可能」が鍵に

 このため半導体メーカーは、自らのビジネスモデルを変化させるべく、真剣に検討する必要がある。特に、汎用IP向けのオープンソースハードウェアを採用して、再プログラム可能な半導体チップの開発に取り組むことにより、マスクコストの上昇を抑え、下流部分での売上高を増加させていくべきである。

 半導体業界には、オープンソースソフトウェアを成功させたという重要な先例がある。開発コストの急激な上昇に直面したメーカー各社は、サービスを中心とした新しい収益源を作り出していく際に、オープンソースハードウェアのIPブロックとボードを重要視することで、不必要な支出を抑えようとするかもしれない。

 また、再プログラム可能なチップも、開発/製造コストを削減し、新たな収入源を作り出すなど、半導体業界にチャンスをもたらす可能性を秘める。半導体メーカーは、あらゆる用途を想定して自社チップの各種バージョンを用意するのではなく、最小限の機能を備えたシンプルな構成のチップを提供し、機器メーカーやエンドユーザーが追加機能を搭載したい場合に、その分の支払いを求めるということが可能になる。こうした仕組み(「Features-as-a-Service」)を構築することにより、一度の半導体チップ設計で、ターゲット市場を大幅に拡大できるだけでなく、顧客からの細かい要件にも対応できるようになるだろう。

 半導体メーカーはここ数十年の間、自分たちが提供するチップを使う機器メーカー/消費者など、下流において何兆米ドル規模の利益を生み出すモデルを構築してきた。だが、進化していくエコシステムの価値を、(自分たちにも利益が出るよう)十分に引き出すことについては、なかなかうまくできていないように感じる。

 半導体業界における技術革新はこれまで、ソフトウェアよりもハードウェアに重点が置かれてきた。これを変えるべき時が、きたのかもしれない。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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