Googleの人工知能(AI)「AlphaGo」は、韓国のトップ棋士と対戦し、3連勝した。囲碁や将棋、チェスなどにおいてAIがいずれ人間に勝つであろうというのは、誰しもが予想していたことだろう。だが筆者にAIに望むのは、「人間よりも賢くなること」ではなく、「人間を賢くしてくれること」である。
筆者はアジア出身だが、囲碁は打たない。
囲碁は複雑すぎて筆者にはできない。やったことがあるのは五目並べくらいだ。
日本では、五目並べは子供がする遊びだ。囲碁と同じように黒と白の碁石を使って2人の打ち手が交互に石を置くが、五目並べは縦、横、斜めのいずれか一列に同じ色の石を並べた方が勝ちという単純なルールだ。
筆者は子供のころ、父と五目並べをした。父は、囲碁がかなりうまかった。そうしたこともあって、筆者は何かに真摯(しんし)に取り組む人に対する憧れが大きい。だが、プロの囲碁棋士はそんな次元を超えた存在だ。彼らは、真の天才だ。
筆者は、Googleの人工知能(AI)を開発する「DeepMind」チームと韓国の伝説的な囲碁棋士であるLee Sedol氏との歴史的な5番勝負のニュースを知っても、特に興味を抱かなかった。「どちらが勝とうが構わない」と思って、気にもしていなかった。
2016年3月10日(米国)の時点で、DeepMindチームのAI「AlphaGo(アルファ碁)」と同氏の勝敗は2対0だった。
ここに来て初めて、「なぜこんなにも興味がわかないのだろう」と考えてみた。その理由はすぐに見つかった。
1つは、かつて行われたIBMのスーパーコンピュータ「Deep Blue」とGarry Kasparov氏とのチェスマッチの結末にある。1996年の対局ではKasparov氏が勝利したが、1997年の対局ではDeep Blueが勝利した。現役の世界チャンピオンが初めてコンピュータに敗れたことに対し世間はどよめき立ったが、残念がる人がいる一方で「技術の進化には、あらがえない」という考える人もいた。
2つ目の理由は、このチェススマッチから20年たった今、米国ではAIを搭載したシステムが人間のドライバーのように自動車を運転することが連邦法で認められていることにある。
2016年2月14日、カリフォルニア州マウンテンビューでGoogle Carと市営バスの衝突事故が起こった。だが、Google Carはこの事故の後も走行経路を学習したり、新しいアルゴリズムをアップロードしたりすることで日々進化を続けている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.