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デジタル化の中で浮沈を決めた“半導体設計の本質”この10年で起こったこと、次の10年で起こること(3)(1/3 ページ)

デジタル家電市場で、なぜ台湾のMediaTekは、日本や欧州の名だたる競合半導体メーカーを蹴散らせたのか――。今回も、この10年で大きな成長を遂げた台湾MediaTekの強さに迫る。

» 2016年03月24日 11時30分 公開
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 半導体チップの中身は、大きく分類すると「デジタル」と「アナログ」に分けられる。文字通りの“非連続”“連続”の回路でできている。デジタルは、クロックと呼ばれる定期的に与えられる信号の合間、合間に処理を行って随時、結果を出力する構造になっている。デジタルの場合、回路を構成する素子(=トランジスタ)は電気的にオン状態か、オフ状態以外は値として扱われない。オン状態を「1」、オフ状態を「0」として扱い、中間の「0.X」や「0.0X」という値は扱われない(実際にはトランジスタは中間の値も持っている)。

 1を0に、0を1に切り替えるのには時間がかかる。ナノ秒単位の極めて小さな時間だが、この切り替え速度を速めることで半導体は進化を続けてきた。コンピュータの進化は素子の切り替え速度が向上することで周波数を高められた。同じ機能のCPU(命令)でも10MHzと1GHzでは結果が出力される時間が大きく異なる。速度を上げるために、より切り替え速度を上げる必要がある。これが半導体進化の1つの課題であり続けた。

 一方でアナログは、連続性を持っているので「0.x」「0.0x」も値として出力する。中間の値も表現できるということは、より現実に即しているといえる。例えば明るさは「まぶしい」「真っ暗」の間にも「ややまぶしい」「やや暗い」など複数の状態があるからだ。半導体の微細化、切り替え速度の著しい向上によって、ビット拡張(4ビット→8ビット→16ビット……)が可能になり高度なCPUやDSPなどの出現によって、アナログと同じ連続状態をデジタル処理で表現できるようになった。

 8セグメントから始まった数字の表現は、ドット数の著しい増加によって、印刷物にも劣らない表現ができるようになっている。これはデジタルで扱える範囲、表現の速度が従来のアナログに追い付いた、あるいは、追い越した一例だ。

 1980〜90年代、多くの機器はデジタル化に大きく舵を切った。

一斉にデジタルへ

 アナログで表現される場合の値をデジタルでは、どのように表現すればよいかを規定すればよい。その結果多くのフォーマットが生まれ、“CD→DVD→Blu-ray”に代表される、音楽/映像が真っ先にデジタル化された。同時期にはデジタルカメラ、通信(Wi-FiやBluetooth)、ディスプレイなども一斉にデジタル化へと移っていった。

 デジタル化の利点には、さまざまなものがあるが、特に大きな利点が3つある。デジタルデータは、1と0の組み合わせによって暗号化されたデータなので、暗号を復元できれば「さまざまな機器に使える」(JPEGやMP3などが普及に関与した)。紙やフィルムではなく、シリコンやHDDなどの媒体に記録できるので「経年劣化が起こりにくい」。そして、この2つの利点を活用することで、「いつでもどこでも同じものが再現および作ることができる」という3つの利点である。

 デジタル革命と呼ばれた1980〜90年代、新デバイスの誕生で日本の電機メーカー、部品メーカーは大いに潤った。しかしながらデジタル機器、デジタルチップの多くは2000年代、台湾、韓国に多くの市場を奪われ、さらには2010年代になって、中国にさえも市場を席巻され始めている。

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