安価な部材を使い、製造しやすく、高効率な太陽電池を作りたい。米NRELとスイスCSEMが2016年1月に発表した手法では、シリコン技術をベースに異種の半導体を組み合わせた。2層を上下に並べて機械的に接続し、29.8%という高い変換効率を得た。どのような特徴がある技術なのか、NRELのDavid Young氏に開発ポイントを聞いた。
米国立再生可能エネルギー研究所(NREL:National Renewable Energy Laboratory)とスイス連邦政府などが出資する研究機関Swiss Center for Electronics and Microtechnology(CSEM)は、変換効率29.8%の太陽電池セルを共同で開発したと2016年1月に発表している(図1)。この太陽電池はどのような点で優れているのか、技術の内容を紹介した後、開発者の1人であるNRELのDavid Young氏へのインタビューを紹介する。
両研究所が開発した太陽電池セルは、単結晶シリコン(Si)太陽電池の上に、III-V族化合物半導体であるガリウムインジウムリン(GaInP)太陽電池を重ねた二接合構造を採る。「シリコン+α」という形式をとる太陽電池では、29.8%という今回の数字が変換効率の世界記録だ*1)。
*1) 自然状態の太陽光に似せた試験環境(非集光)における結果。Progress in Photovoltaics誌(米John Wiley&Sons)による「Solar cell efficiency tables(version 47)」
2種類の太陽電池を上下に積み重ねた理由は、太陽スペクトルの形状と半導体のバンドギャップから理解できる。
太陽から地表に到達する光は図2のように波長300nmから2500nmまで広い範囲にわたるスペクトルを採る。近赤外線がエネルギーの52%を、可視光線がエネルギーの43%を占める。紫外線は5%と少ない。
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