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認知症徘徊者をWi-SUNで見守る、千葉で模擬訓練「直接、声をかけることにつながってほしい」(1/2 ページ)

情報通信研究機構(NICT)とNTT東日本は2016年3月27日、920MHz帯を使用する無線通信規格「Wi-SUN」を活用した認知症高齢者を見守るシステムの模擬訓練を千葉県香取郡神崎町で実施した。EE Times Japanでは、神崎町社会福祉協議会の担当者に、模擬訓練の成果と課題を聞いた。

» 2016年03月29日 10時30分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

 情報通信研究機構(以下、NICT)とNTT東日本は2016年3月27日、「Wi-SUNを活用した高齢者見守りシステムによる認知症高齢者等を想定した捜索模擬訓練」を千葉県取郡神崎町で実施した。同模擬訓練は、神崎町社会福祉協議会が主催する地域認知症ケアコミュニティー事業「みまもり声かけ体験」において実施された「声かけ体験(人)」と「捜索支援システム実証実験(ICT)」を連携させた見守りトライアルである。

 模擬訓練で使用するシステムは、徘徊高齢者役が所持する小型のWi-SUNタグから発信される電波を、町中に設置したWi-SUNルーターで検知することで、徘徊高齢者役の位置情報を把握できる。また、徘徊高齢者役と遭遇する可能性の高いスマートフォン(スマホ)保持者(捜索協力者役)を自動的に抽出して、徘徊高齢者役の特長を含めた捜索協力依頼情報をスマホに通知する機能や、捜査協力者役の数十メートル以内に徘徊高齢者役が近づいた場合に通知する機能も備えている*)

*)同模擬訓練では、スマホやWi-SUN機器などのデバイスが発信する電波によって、位置情報が収集されることに同意した人のみが、徘徊高齢者役/捜査協力者役として参加している。

模擬訓練で使用したタグ(左)とルーター(右) 出典:NICT

 Wi-SUNは920MHz帯を使用する無線通信規格で、2.4GHz帯や5GHz帯の周波数を用いる無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth Low Energy(BLE)などよりも波長の長い電波を使うため、建物で遮られても検知しやすい。通信距離も500m〜1kmと長いため、離れていても検知されやすいのが特徴だ(通信速度は数百kビット/秒程度)。消費電力も低く、乾電池では数年間、ボタン電池でも数カ月レベルの連続動作が期待できるという。

システムの詳細

 同システムは、Wi-SUNに準拠したビーコンを定期的に送信するタグ、ビーコンを受信して必要な情報をクラウドに送信するルーターとサーバで構成されている。タグは、捜索対象となる徘徊高齢者が持ち歩くことを想定。ルーターは街中に設置されていることを想定している。サーバでは、クラウドに収集されたビーコン情報と捜索対象者をひも付けし、行方不明届などが出ている捜索対象者の行動経路や現在位置を推定/解析する処理を行う。処理結果は、Web画面上で確認できる。

 模擬訓練では、約10カ所にルーターを設置。ルーターはビーコンを検知すると、含まれているデバイス識別情報を読み取り、検知時刻の情報とルーター自身の識別情報や位置情報を含めたIPパケットを生成して、クラウドに送信する。

 サーバでは、複数のルーターから集まったビーコンの検知情報を解析して、タグ(つまり徘徊高齢者役)が、どのような経路をたどり、現在どこにあるかを推定。自治体職員などの管理者は、その情報をWeb画面で確認できる。

模擬訓練のイメージ 出典:NICT

 なお、ビーコンはどのようなWi-SUN機器でも検知が可能な無線信号形式となっているという。Wi-SUNは、農業や医療、社会インフラのモニタリングなどにおいて普及が考えられているため、将来的には専用のルーターを設置するのではなく、他の用途として設置されたWi-SUN機器がビーコンを検知する役割を担うことが期待されるとした。

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