テロの脅威に備えて国土交通省を中心に普及が進むボディースキャナー。ボディースキャナーとは空港の出国ゲートで、乗客の全身をスキャンできる検査機器である。2015年10月には主要空港で運用評価試験が行われ、2016年3月29日にその結果が発表されるなど活発な動きを見せている。本記事では、ボディースキャナーメーカー各社それぞれの特長に加えて、国内の動向について紹介する。
フランス、チュニジア、クエートなど、世界でテロ事件が相次いだ2015年。2016年3月にはベルギーの首都ブリュッセルで連続テロが発生し、死者32人/負傷者340人の犠牲者を出した。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを筆頭に、国内もテロの標的にされるのではないかといった懸念を持つ人も多いだろう。
テロの脅威に備えて現在動きが活発になっているのが、国土交通省が中心になって普及を進める“ボディースキャナー”である。ボディースキャナーとは、空港の出国ゲートのセキュリティチェックにおいて、乗客の全身をスキャンする検査機器だ。検査にはミリ波が用いられており、皮膚から反射する電波を受信して異物を検知する。数秒で異物を検知できることから、米国や欧米を中心に既に導入が進んでいるという。
本記事では、活発な動きを見せるボディースキャナーの国内動向について紹介する。
ボディースキャナーが国内で導入を検討されたのは、2015年5月に開催された国際組織犯罪等、国際テロ対策推進本部において、「邦人殺害テロ事件等を受けたテロ対策の強化について」が決定されたことに始まる。その中に、「国土交通省は、空港における保安検査の高度化を検討する」といった内容が盛り込まれた。
そこで、国土交通省航空局が保安検査の高度化の具体策として掲げたのが、ボディスキャナーの導入である。2015年10月から、関西国際空港/成田国際空港/羽田空港で、導入を検討するための運用評価試験が行われた。
運用評価試験に参加したボディースキャナーメーカーは、L3コミュニケーション、スミス ディテクション、ローデ・シュワルツの3社。いずれも、認証規格「TSA(米国)」または「ECAC(欧州)」に準拠した製品を展開していることから選ばれている。
国土交通省航空局はボディースキャナーの運用評価試験を実施した背景について、「現行のセキュリティチェックは金属探知器に加えて、直接体を触る“接触検査”が主に行われている。しかし、金属探知機は、3Dプリンタで作製した樹脂製の銃や液体、爆発物など金属でないものは検知することができない。接触検査に関しても、多くの時間を要してしまうため、乗客の負担が少ない方法を模索していた」と語る。
ボディースキャナーは、2010年にも成田国際空港で実証実験が行われた。しかし、当時の機器は全身そのものが見えてしまうため、“ヌードスキャナー”と呼ばれてしまうといった批判が相次いだという。今回、評価試験で活用された3社のボディースキャナーに関しては、いずれも検査結果が絵で表示される。データも自動的に消去されるため、プライバシー保護への配慮が行われているといえる。
また、ミリ波はレントゲンなどで活用するX線(放射線)と異なり、遺伝子を傷つける作用がない。電波の強さも、「電波防護指針」の基準値を下回っている微弱な電波であり、電界強度も携帯電話の数百分の1から1万分の1程度としている。
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