ロームの主席技術員である成清隆氏は、WPCが主催した「ワイヤレスパワー総合展示会&セミナー」(2016年4月8日)において、最大受電電力15Wであるワイヤレス給電規格「Qi Medium Power」のシステム構成や従来仕様との違いなどを一般向けに初めて公開した。
ワイヤレス給電技術の普及促進を図る「Wireless Power Consortium(WPC)」は2016年4月8日、「ワイヤレスパワー総合展示会&セミナー」を開催した。WPCとは、市場で最も普及する電磁誘導方式の規格「Qi(チー)」を推進する業界団体である。
セミナーでは、ロームの主席技術員である成清隆氏が「ワイヤレス急速充電」と題して、最大受電電力15Wである「Qi Medium Power」の概要仕様を一般向けに初めて公開した。全体のシステム構成や従来仕様との違い、制御ステップについて説明を行った。
Qiの従来仕様は、最大受電電力5Wの「Qi Low Power」だ。日本では普及があまり進んでいないが、Samsung「Galaxy S7」をはじめ、海外は普及が進んでいる。
成清氏によると、WPCが規格策定において重視するのは、受電機器側の設計自由度と互換性である。それをもとに、参画メンバーによって、提案/議論/プロトタイプ機作製/メンバー間で互換性試験が行われ、仕様が策定される。
「15Wへと大電力化するにあたり、技術的な課題が多くあった。ICやコイルの発熱、位置ずれ耐性、筐体が大きくなること、異物発熱、互換性が挙げられる」(成清氏)。そのため、Qi Medium Powerは今回、異物による発熱などを防ぐ高い安全性確保のため、Qi Low Powerと比較して、双方向通信/異物検知機能を新たに追加した。
Qi Low Powerの通信は、受信機から送信機への片方向のみだった。これは、給電停止命令や電力制御命令、受電能力情報を送るためである。Qi Medium Powerは、送信機から受信機への通信も同時に行うことで、異物の有無情報などを送るという。
異物検知機能では、新たに「キャリブレーション方式」と「電力伝送前検知(Q検知方式)」が新たに追加されている。Qi Low Powerでは「電力損失方式」と呼ばれる、出した電力と受けた電力の差によって異物を検知する方式が活用されていた。
成清氏は、「電力損失方式だけでは、15Wのワイヤレス給電に対する安全の確保が足りない。そのため、Q値の変化を見て異物を判断する電力伝送前検知と、キャリブレーション方式を追加した。これにより、電力を伝送する前に異物を検知する」と語る。
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