計測したコウモリの飛行軌跡から飛行の選択的注意を、数理モデルを用いてパラメータ推定した結果、長い時間間隔で2匹の獲物を捕食したときの飛行軌跡は、獲物1に対する選択的注意にのみ基づき軌道が計画されていることが分かった(図3A)。
しかし、短い時間間隔で2匹の獲物を捕食したときは、コウモリが目前の獲物だけでなく次の獲物にも飛行中の注意を分散させていること、選択的注意の分散の割合は数値シミュレーションにおける最適値とほぼ一致したとする(図3C)。
つまり、コウモリは短い時間間隔で獲物を捕食するときは複数の獲物に対して注意を分散させ、それらの獲物を高確率で捕食できる飛行ルートを選択していたのだ。
今回の研究成果は、アクティブセンシングで検知した複数の標的を効率的に捕捉するための軌道計画や、発展させた数理モデルを用いて自律移動を要するロボット技術分野(高機能の飛行ドローンなど)への応用が期待される。
同研究は、藤岡氏に加えて、同志社大学生命医科学部の飛龍志津子准教授、東京大学生産技術研究所の合原一幸教授らによる共同研究。日本学術振興会の科学研究費助成事業、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究の課題「コウモリの生物ソナー機構に学ぶ、ロバストな実時間空間センシング技術の創出(飛龍志津子氏)」、内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)などの一環で行われている。
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