産業技術総合研究所(産総研)の西尾憲吾主任研究員らは、アモルファス材料などの不規則な原子の並び方を簡単に表記できる数理的手法を開発した。
産業技術総合研究所(産総研) 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター 物性機能数理設計手法開発チームの西尾憲吾主任研究員と、同研究センターの宮崎剛英副研究センター長は2016年4月、アモルファス材料などの不規則な原子の並び方を簡単に表記できる数理的手法を開発したと発表した。
トランジスターやメモリなどの絶縁膜、太陽電池の透明電極などの形成には、アモルファス金属酸化物などが用いられることが多い。アモルファス材料は均一な膜を容易に作製することができるからだ。この時、アモルファス材料の原子配列を人間が直感的に理解できるよう簡潔な記号で表現できれば、材料の構造と機能をより深く理解することが容易となる。
ところが、アモルファス材料は原子配列が不規則なため、材料の構造を表現することが難しかった。不規則な原子配列を表現する手法の1つとしては、原子をボロノイ多面体に置き換えて表現するボロノイ多面体法が用いられている。しかし、この多面体の配列パターンを数列で表現する手法がこれまではなかったという。
産総研の研究チームは今回、「多面体は多角形のパーツを組み合わせたもので、多面体タイリングは多面体によって構成されている」ことに着目、多面体や多面体タイリングを簡潔な数列で表現できる理論を生み出した。
アモルファス材料は、ボロノイ多面体が複数組み上がった構造として表現することができる。この多面体は複数の多角形を組み合わせで作成することができる。その多角形の組み合わせについて、研究グループはある規則を発見し、多面体を数列(多面体コードワード)で表す理論を生み出した。この理論から、複数の多面体を組み上げることで多面体タイリングを作り上げることができる。この多面体タイリングを、多面体コードワードの並び(多胞体コードワード)で表すことにした。
多角形、多面体、多面体タイリングは階層構造となる。この構造に着目し、多面体タイリングを表現する数理的理論を構築した。これによって、人間が容易に理解できる構造表現を可能にすると同時に、計算機でも取り扱い易い形で表現することができた。
開発した理論では、多面体を再現するために必要と思われる情報をすべて収集し、多面体コードワードに記録する。その後、記録した情報が必要なものかどうかをチェックして、不必要な情報は削除する。こうしたチェックを繰り返し行うことで、より短いコードワードで多面体を表現することができるという。
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