XMCも例外ではない。3D NANDフラッシュ技術の実証や、製造に不可欠なプロセス技術のさらなる向上に向けて長い道のりをたどる上で、同じような課題に直面することになるだろう。南川氏は、「少なくとも3〜4年、またはそれ以上の期間が確実に必要となる」と述べる。
しかしここで、多くの専門家にとって不可解とされているのが、XMCの3D NANDフラッシュIPだ。
それを説明できる要素の1つとして挙げられるのが、旧Spansionが、Cypress Semiconductorに買収される前の2015年2月に、XMCと共同で3D NANDフラッシュ技術開発に取り組んでいくと発表したことである。
半導体業界のコンサルタントおよびジャーナリストである湯之上隆氏は、EE Timesのインタビューに対し、「ここで問題となるのが、Spansionがこれまで、フラッシュメモリ開発において、NAND型ではなくNOR型フラッシュに焦点を絞ってきたという点だ」と指摘する。
湯之上氏は、エンジニアから転身したコンサルタントであり、日本の半導体業界に関する著書も数冊出版している。同氏はかつて、日立でドライエッチングの開発を専門に手掛けた経歴を持つ。
同氏は、「つまり、これまで誰もSpansionの3D NANDフラッシュメモリを見たことがないのだ。XMCとSpansion(現Cypress)の両社にとって、まったく未知の領域ということになる」と述べる。
EE Timesが武漢のXMCにコンタクトをとったところ、同社は独自の3D NANDフラッシュ技術開発について、異なる構想を描いているようだ。XMCの広報担当者は、EE Timesの質問に対し、電子メールで以下のように回答している。
「XMCは2014年に、3D NANDフラッシュプロジェクトを始動した。その後、XMCとSpansion(現Cypress)は、共同開発およびクロスライセンシング契約を締結し、両社で3D NANDフラッシュの共同研究開発を行うとともに、IPを共有することになった」
XMCは2015年5月、「3D NANDフラッシュプロジェクトにおいて、同社にとって初となるメモリテストチップの電気的検証に成功し、飛躍的な進歩を達成することができた」と発表した。さらに広報担当者は、「当社ではそれ以来、メモリセルの性能向上と信頼性の最適化を実現し続けてきた」と付け加えている。
XMCは、3D NANDフラッシュ市場の勢力図を十分に認識しているようだ。同社でCOO(最高執行責任者)を務めるHong Feng氏は、2015年11月末に開催された「Integrated Circuit Industry Promotion Conference」において基調講演を行い、「NANDフラッシュ技術は、XMCに絶好のチャンスをもたらしてくれる。3D NANDフラッシュ技術開発ではSamsungが先頭を行くが、他社に比べて2年ほど先駆けているという程度にすぎない。当社が今すぐに着手すれば、Samsungに追い付き、トップクラスに入る可能性は十分にあると考えている」と述べている。
そして、Spansionとの提携契約だ。XMCは、「SpansionがCypressに買収されても、当社とSpansionの協業関係に影響が及ぶことはない」と主張している。
SpansionとXMCが2015年2月に提携発表を行った時、Spansionで戦略的提携担当シニアバイスプレジデントを務めていたAli Pourkeramati氏は、「3D NANDフラッシュは将来的に、データの効率的な保存方法に大変革をもたらすだろう。当社が10年以上前に独自開発した主要なチャージトラップ技術『MirrorBit』は、3D NANDフラッシュの技術革新において重要なメリットをもたらすと同時に、類まれな高性能データ保存技術を実現することができる」と述べた。
IHSグローバルの南川氏は、「10年以上も前のことになるが、かつて日本では、全ての半導体メーカーがNANDフラッシュ事業に携わっていた。日本のエンジニアたちは、NANDフラッシュに非常に精通していたが、彼らが当時開発したNANDフラッシュ技術は、現在の3D NANDフラッシュとは全くの別物だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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