東芝の電子デバイス部門の2015年度(2016年3月期)業績は、550億円の営業赤字を計上する見込みとなった。前年度に比べ2716億円減という大幅減益だ。NAND型フラッシュメモリ(NANDメモリ)事業を除き、ディスクリート、システムLSI、ストレージの3事業で赤字となり、事業構造の見直しを実施する。さらに2015年後半からの売価下落で利益幅が縮小しているNANDメモリも、高集積品の開発を急ぎ価格競争力を高めるなどし、電子デバイス事業として2016年度の黒字転換を目指す。
東芝の電子デバイス部門の中核を担う社内カンパニーであるセミコンダクター&ストレージ(S&S)社の2015年度(2016年3月期)第3四半期累計業績は、売上高1兆1907億円(前年同期比941億円減)、営業利益237億円(前年同期比1692億円減)と黒字を確保している。ただ、四半期ベースでは、第3四半期に営業赤字に転落した。赤字転落の要因は、ディスクリート、システムLSI、ストレージの3事業での赤字に加え、これまで利益をけん引してきたNANDメモリ事業での売価下落の影響が大きく響いた。第3四半期におけるNANDメモリの売価は、米ドルベースで前四半期比15%程度下落し、営業利益率も13%程度にとどまったとする。
第4四半期については、赤字3事業の構造改革費用や在庫評価減などの計上に加え、NANDメモリのさらなる売価下落を見込む。その結果、電子デバイス部門の2015年度通期業績予想は、売上高1兆5900億円(前年度比1788億円減)、営業損益500億円の赤字(前年度比2716億円の悪化)となり、通期ベースでも赤字に転落する。
NANDメモリの第4四半期営業利益率は「10%を若干下回る見込み」(東芝上席常務平田政善氏)とし、さらに収益性が悪化する。収益率改善策としては、容量当たりの製造コスト削減が見込める記憶セルを垂直方向に積層する3次元NANDメモリ(3D NAND)「BiCS Flash」の積層数を増やした製品の開発を急ぐ方針だ。現状、3D NANDとしては、15nm世代のプレーナー(平面)型NANDメモリとほぼ同等の製造コストレベルとなるセル積層数48層品を製品化。そして現在、64層品を開発中で「一刻も早く、(主力生産品種を64層品に)切り替え、15nmプレーナー型品を大きく下回る価格で提供したい」(平田氏)とする。
3D NANDの増産に向けた投資も継続する。2015年10月に一部が完成した3D NANDメモリ専用工程の製造棟「四日市工場新・第2製造棟」(三重県四日市市)のフル整備に加え、同工場敷地の隣接地約15万m2の取得を決定。プレーナー型から3D NANDへの速やかな切り替えを実施できるよう準備を整えている。
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