メモリ技術の開発に積極的な中国だが、話はそれほど簡単ではない。中国では、元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏がDRAMメーカーを立ち上げるなど、注目に値する動きも出てきている。
「3D NAND型フラッシュメモリでSamsung Electronicsに追い付く」と、積極的な姿勢を見せる中国のファウンドリーXMC。IHSグローバルで日本調査部ディレクターを務める南川明氏は、かつて日本のエンジニアが精通していたNAND型フラッシュメモリは、現在の3D(3次元) NANDフラッシュとは全くの別物だ、と解説している。
ここで疑問となるのが、XMCが、中国の3D NAND市場に狙いを定める上で、十分な経験を積んだエンジニアたちを集めることができるのかどうかという点だ。南川氏は、「この問題こそが、まさにボトルネックとなるだろう」と述べている。
半導体業界のコンサルタントおよびジャーナリストである湯之上隆氏も同様に、中国でプロセス技術関連のエンジニアが不足していることについて触れながら、「個人的には、XMCが成功を収める可能性は低いとみている」と明言した。
しかし湯之上氏は、「成長著しいビッグデータ時代において、メモリデバイスの需要が爆発的に増大していることを考えると、メモリ事業を追及していくとする中国の選択は賢明だといえる」と述べる。
香港Sanford C. Bernsteinの研究者によると、中国では2013年に、半導体の輸入額が石油を上回ったという。このことからも、中国のメモリ事業に対する意欲の大きさがよく分かるだろう。
さらに、XMCのCEOであるSimon Yang氏が、中国で2015年11月に行われたサミット「Memory and Data Storage Technologies」の基調講演で語った内容からも、その意志の強さがうかがい知れる。
同氏はこの時、「IC業界および国内供給において、飛躍的進歩を迅速に実現するためには、メモリ開発競争を避けて通ることはできない」と断言したのだ。
同氏は、「CPU市場は、極めて複雑なエコシステムの構築が不可欠であるという点で非常に難しい分野であるが、メモリ市場も、技術的な進歩の実現を目指していく上で、CPUの場合と同程度の困難を伴う。しかし、障壁を克服して製品品質を維持することができれば、生産能力を飛躍的に高めることが可能だ」と述べている。
Yang氏は、XMCがメモリ分野に資金を投じる理由として、以下の3つを挙げている。
1つ目は、中国が、世界市場需要全体の55%以上を占めているという点だ。中国メーカーは、十分な品質を確保できれば、競争力を持つことが可能である。2つ目は、メモリ開発に関しては、政府からの資金/政策援助が保証されているという点。そして3つ目は、プロジェクトに魅力があれば、中国に多くの人材を引き付けることができるという点だ。
メモリ製品を求める中国の呼び掛けに対し、世界的なメモリメーカーが応じている。例えばSamsung Electronicsは、中国西安市の工場で3D NANDフラッシュ「V-NAND」を製造している。Intelは2015年10月に、大連にある同社の300mmロジック工場を、3D NANDフラッシュの製造工場に移行すると発表したところだ。
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