情報通信研究機構(NICT)は2016年4月、第4期中長期計画のスタートにおける3つの強化策の発表とともに、「脳をリバースエンジニアリングする」と題して、脳と研究成果の発表を行った。
情報通信研究機構(NICT)は2016年4月、第4期中長期計画のスタートにおいて3つの強化策を発表した。強化する研究開発の1つとして、人工知能と脳情報の一体型研究がある。脳情報は今までフロンティア研究の中の1つとして取り組んでいたが、次世代の人工知能という位置付けもあり、今後は人工知能と一体として行うことで研究を進めていくという。
発表会では、NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)の主任研究員を務める西本伸志氏が、「脳をリバースエンジニアリングする」と題して研究成果の発表を行った。
西本氏は、脳と人工知能の研究を一体型として行う背景として、次の2点を挙げる。1つは、それぞれの研究が持つ課題が非常に似ていること。「どちらも世界を解釈するシステムだが、その中間表現でどのような処理が行われているか分からない点が多い」(西本氏)と語る。2つ目は、直近5年間で研究に大きな進展があったことを挙げる。画像/音声認識の技術や複雑な解析技術の発展が著しい。
西本氏の研究が目指すのは、「人の自然な知覚を支える脳機能の解明」である。人が動画や画像を見ているときの脳活動をfMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)で記録することで、脳活動の中間表現を理解しようという研究である。
下記の画像が示すのは、映像を見ているときの脳活動の様子。赤い色で示されているのが脳が活発に活動している部分、青い部分が脳活動があまり行われていない部分だ。脳活動の様子を見ても、私たちはよく分からない。西本氏は、「このよく分からない脳活動の様子が、ある種の暗号化された脳の“言葉”と考えてほしい」と語る。
西本氏によると、知覚体験と脳活動のデータから脳の言葉を理解するには、2種類の方法をが考えられるという。1つ目は、「エンコーディングモデル」である。知覚体験の特徴/成分が、どのように脳で符号化されているかを調べることで脳情報を理解する。
2つ目は、「デコーディングモデル」。エンコーディングモデルの逆であり、脳活動から知覚体験が何なのかを逆符号化することで脳情報を理解するといった手法だ。この2つの手法を行うことで、脳のモデル化や脳内情報の解読ができるとする。
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