米大学の研究チームが、室温環境でフレキシブル基板上にグラフェン回路を形成する技術を開発した。
グラフェンは、銅箔上でCVD(化学気相成長)法を適用して簡単に成長させることができる。ただし、必要な回路パターンをエッチングして非金属基板に移す簡単な手法はなかった。University of Illinois at Urbana-Champaign(イリノイ大学アーバナシャンペーン校)の研究チームは、単純なシャドーマスクを使って室温でグラフェン回路を迅速にパターンニングしてフレキシブル基板に移す1ステッププロセスを開発したと発表した。
グラフェンは銅箔上でCVD法を適用して簡単に成長させることができるのは、以前から分かっていた。Texas Instruments(TI)やIBMなどのエンジニアたちは、従来の手法を適用して回路をパターンニングできるようシリコン基板上にグラフェンを成長させるべく試行錯誤を重ねてきたが、成功には及ばなかった。
イリノイ大学研究チームの開発した室温プロセスは、シリコン基板上でグラフェンを成長させる代わりに、銅の上でグラフェンを簡単に成長させ、グラフェン回路をエッチングして基板に移す手法(同研究チームはこの工程を「1ステップ」と主張している)だ。次世代材料であるフレキシブルポリマー基板など、ほぼどんな基板に対しても適用できるという。この手法のカギとなるのが、単純なシャドーマスクに回路パターンをカッティングすることだという。
同大教授のSungWoo Nam氏が率いる同研究チームに所属する博士号取得候補者のKeong Yong氏は、EE Timesに対して、「所望のマイクロパターンをCADソフトウェアで設計し、コンピュータと連動した商用レーザーカッターを使ってパターンに応じたシャドーマスクを作製する。このような迅速な設計を繰り返し行って回路を複製するために、レーザーカッターの回転率を上げて低コストのポリマーと金属シートをパターンニングする」と説明した。
銅箔にCVD法で蒸着したグラフェン上にカットされたシャドーマスクを置いて、酸素プラズマを使ってエッチングする。パターニングされたグラフェンは、ラミネーション(積層)プロセスを適用してフレキシブル基板に移される。ラミネーションプロセスでは、確実に共形接触させ銅箔をエッチング除去する。
Yong氏はEE Timesに対し、「このような簡易なアプローチにより、われわれの方法では、従来の複雑な微細加工プロセスや高分子足場の必要性をなくすことで、全体の製造工程数と時間を減らすことが可能となった。さらに重要なのは、ポリマーを使わないことから、より純度の高いグラフェンの生成にも役立つ点だ」と語った。
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