同社は会社設立以降、印刷技術/フィルム/インクの改良を重ねた。これにより、寿命を5〜10年まで延ばしている。清水氏は「大きなブレークスルーがあったわけではなく、劣化の要因を分析して地道な改善を重ねた」と語る。
寿命を延ばすことには成功したが、もう1つ「パターンへの部品実装」の課題があった。電子部品は一般的に、ハンダで樹脂基板に接着/実装されているが、耐熱性の低い紙やフィルムの基板を用いるインクジェット印刷法では、ハンダ付けの温度に耐えることができない。つまり、ハンダ付け以外の方法で接着する必要がある。
そこで、AgICはBeyond Next Venturesをリードとする総額1億7500万円のシリーズAで、セメダインも出資する形で手を組んだ
セメダインは既に、高い熱を加えずに部品実装できる導電性接着剤「SX-ECA」の開発に着手。2016年1月に開催された「ウェアラブルEXPO」では、布地に回路を形成し、SX-ECAを用いてLEDチップを実装した「着るセメダイン」を試作、展示するなどしている。AgICは、このSX-ECAとともに、導電性インクの普及を目指すことになった。
清水氏は、「セメダインの導線性接着剤は、大きなメリットが2つある。1つ目は“どこにでも接着できること”、2つ目は“やわらかいこと”。セメダインがすごいのは、硬化した後にやわらかい状態を保つ技術を持っていることだ。家の壁の間にある接着剤を触ったら、プニプニするのを体感したことがある人も多いだろう。曲げても割れずに強く接着していることが、フレキシブル基板に非常に相性が良かった」と語る。
導電性接着剤には、課題がまだ2つあるという。1つは、ハンダ付けにおけるセルフアライメント効果がないため、接着剤の位置を厳密に合わせる必要があること。2つ目は、保存性とする。この2つの課題を解決できると、センサーなどを実装した回路を実現できるだけでなく、プリント配線板の試作にもトライできるようになるとした。
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