清水氏は、B2Bに舵を切った2つ目の理由として、プリンテッドエレクトロニクス市場の盛り上がりを挙げる。米国では2015年8月、ホワイトハウスと国防省がプリンテッドエレクトロニクスに特化した研究所を設立。1億7100万米ドルの投資を決めた。
清水氏によると、国内では政府をあげた動きはまだない。2016年4月には、東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授が「皮膚に貼りつけるだけで、ディスプレイになる」技術を発表するなど、国内のプリンテッドエレクトロニクス市場も少しずつ動きをみせている。しかし、フィルムに回路をインクジェット印刷する技術で事業を行うのは世界的にみてもAgICのみだ。
清水氏は「将来的には、インクジェット印刷による電子回路の開発を“日本発”で世界に届けていきたい」と語る。AgICは、業務用インクジェットプリンタメーカーのミマキエンジニアリングと技術提携を行っている。インクジェット技術は世界的にも限られた企業しか持たない中で提携でき、かつ、プリンタは日本が強みを持つ分野であるため、世界展開するのに恵まれた環境にあるという。また、生産拡大に向けた施策として、今後も企業との連携を積極的に進めていくことを検討しているとした。
「プリンテッドエレクトロニクス市場は、ここ10年で急激に成長し、10年後には世界で10兆円規模の産業になるだろうといわれている。5年後くらいには、今でいうドローンのような“バズワード”となり、新しい使い道がどんどん出てくるだろう。そのタイミングで、当社も最古参のプレイヤーとして大きく成長していきたい」(清水氏)
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