QualcommやMediaTekから手に入れたチップセットは半完成品。
一方で、日本国内では、セットメーカーはA社は、ベースバンドLSIをB社から、電源ICをC社から、トランシーバーICをD社から、オーディオ用ICをE社から、……、寄せ集めて完成品を組み上げる――。
プラットフォームやターンキーは半完成品だが、決して問題がないわけではない。しかし、多くの会社が同時期に同じ半完成品を使う。多くのユーザーが同時に同じチップセットをデバッグしていることになる。そのため、製品の成熟度が早く高まることになる。一方で、複数のメーカーから半導体製品を寄せ集めるセットメーカーのシステムを、デバッグするのは、あくまでもそのセットメーカー1社のみ。前者はパラレル検証で後者はシリアル(もしくは点)の検証にならざるを得ない。パラレル検証は、面となっての検証なので、成熟度の高まりもあれば、速度も速い。一方でシリアル検証、多メーカーチップでは問い合わせなどのすり合わせロスも発生し、遅くならざるを得ず、結果として、バグで開発が遅れてしまえば、遅れを挽回するために「仕様」をダウンさせることさえも生じてしまう。
こうしたキット化は2010年以降、あらゆる分野で半導体の使い方の主流になってきた。それまでは単体の半導体を組み合わせることに長けたセットメーカーの力が支配的であった。だが、半導体メーカーが半完成品を提供するようになると、おのずと、そうしたセットメーカーの支配力は弱まってきた。そして、「半導体単体」での生き残りは極めて難しくなってきたということが、この10年での最も大きな変化の1つであった。
日本の半導体メーカーもこうしたチップセット化の遅れが問題点であることは理解している。そのため2010年代になってキットやソリューション、チップセットを意識し、組織変更を行い新たな取り組みを行っている。しかし必ずしも成功には至っていない。
筆者は約30年間、半導体の設計/開発の現場にいた。職位が多少、上がっても決して現場から離れないことを一義としてプロジェクトのほぼ真ん中に席を設けさせていただいた。エンジニアの日常の会話が聞こえる場所に席を設け、大きな問題も、小さな問題も常時、耳にするように努めた。米国でもトータルでおおよそ10年、設計/開発の経験を持っている。そのときは若手エンジニアであったので、常に先輩エンジニアの声を聞いていた。
そうした経験から日米のエンジニアには異なる特長があることが分かっている。
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