RECOM Powerは「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日、ドイツ・ニュルンベルク)で、SiC-MOSFET専用の2WのDC-DCコンバーターなど同社の製品群を展示した。これまで同社は低電力・中電力のDC-DCコンバーターやAC-DCコンバーターを中核としてきたが、今後は500Wなど高電力市場も視野に入れる。
RECOM Power(以下、RECOM)は、パワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日、ドイツ・ニュルンベルク)で同社の主力製品であるDC-DCコンバーターやAC-DCコンバーターなどを紹介した。
PCIM Europe 2016では、SiCやGaNといった次世代パワー半導体が大きなテーマの1つとなっていたが、RECOMもそれは意識している。RECOMでSenior Field Application Engineerを務めるThomas Rechlin氏は、「SiCは大きなトレンドだ。数年前までは、SiCパワーデバイスは今後の成長が期待される市場だが、まだ価格が高すぎる、という声が多かった。だが現在は、手が届く範囲まで価格は下がりつつあり、SiC-FETやSiC-IGBTを採用し始める顧客も増えてきた」と語る。「われわれのような電源メーカーにとっては、非常によい市場機会になるだろう」(同氏)。
実際に同社は2016年4月に、SiC-MOSFET専用に設計した2WのDC-DCコンバーター「RxxP22005D」および「RKZ-xx2005D」シリーズを発表した。「このコンバーターはSiC-MOSFETを効率よく駆動できるように、出力電圧を20Vと−5Vにしている。さらに、太陽光発電システムやモーター制御などSiCパワーデバイスの採用が進む分野では高い絶縁耐圧が求められるので、3kV〜6.4kVの絶縁耐圧を実現している」(同氏)。
一方でGaNパワーデバイスについては、「現在の状況は、5〜6年前のSiCと同じようにみえる」との印象を述べる。RECOMはGaNパワーデバイス向けの製品は持っていない。「顧客によって見解が異なる。求められる仕様についても明確ではない。現時点で必要なのは、GaNについてのより多くの情報だ」(Rechlin氏)。
Rechlin氏は、DC-DCコンバーター市場のトレンドや技術について「正直に言えば10〜15年前とあまり変わりはないし、DC-DCコンバーターが“基本的なアナログ技術である”という点は5年後、10年後も恐らく変わらないだろう。デジタル電源技術も注目を集めてはいるが、個人的には、電源にはデジタルでプログラムできる機能や不具合を検知する機能など、多くの機能は不可欠ではないと思っている。高電力のAC-DCコンバーターは別として、少なくとも汎用的なDC-DCコンバーターと低電力のAC-DCコンバーターは、あくまで、純粋に電力を供給するという意味での“電源”であるべきだからだ」と述べる。同氏は「より重要なのは、信頼性の向上に対して関心が高まっていることだ。信頼性を高めるには、より高い品質・性能を持つ部品を使いつつ、設計を最適化していくことが重要だ」と続けた。
AC-DCコンバーターについては、とりわけ欧米ではEuP(Energy-using Products:エネルギー使用製品)指令やEnergy Starなどの規制があることから、低待機電力への要求が一段と高まっているという。「例えばEuP指令では待機電力が0.5W以下とされているが、これは高電力AC-DCコンバーターにとっては非常に難しい。ただ、低電力・中電力のAC-DCコンバーターに注力しているわれわれにとっては、強みを発揮できるところだ」(同氏)。
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