NECは2016年5月26日、大規模なデータから多数の規則性を発見しさまざまな事象の予測/処方分析が行える独自の人工知能技術「異種混合学習技術」を、分散処理に対応させたと発表した。従来よりも規模の大きなデータを高速に扱えるようになり同技術の応用範囲が広がるという。
「発電所を管理する人工知能が突然、『3基発電機の稼働を停止せよ』とだけ言い出しても、『はい、そうですか』とは従えない。『なぜ、どうして、3基も稼働を停止させなければならないか』という理由、根拠が分からない限り、いくら人工知能の予測が正しくても従えない。結果だけではなく、『なぜ、どうして』を説明できる人工知能が求められる用途は多くある」
NECでデータサイエンス研究所長を務める山田昭雄氏は、NECにおける人工知能の研究開発の“こだわり”を説明する上で、このように語った。
「NECのこだわりは、“説明力”。社会システムなどの用途では、人と人工知能が協調して問題を解くため、どうしてそのような結果になったか説明できる(人工知能の)技術開発に取り組んでいる」
そうした“説明力”にこだわった結果の技術の1つが、大規模データから「これから、何が起こるか」という予測分析と、「これから何をすべきなのか」という処方分析を行う人工知能技術として2012年に「異種混合学習技術」を開発、実用化した。
多種多様なデータから規則性を割り出し、予測、処方に生かす技術としては、現在、ディープラーニング技術が注目を集め、普及しつつある。しかし、ディープラーニング技術は、高精度な予測が行えるものの、その処理内容は、人には理解しがたい。例えば、コンビニのおにぎりの需要予測を行うため、天候や温度、時間や過去の売り上げデータなどを基に、ディープラーニング技術で予測を行った場合、未来に売れるおにぎりの数ははじき出されるが、その予測の根拠は分からない。
これに対し、異種混合学習技術は、人の思考と同じように、天候が晴れの場合、雨の場合、温度が○○℃以上の場合、以下の場合など、場合分けを行いながら、多くの規則性を見いだして、そこから何個売れるかとの予測をはじき出す。そのため、人にもその予測に至った人工知能の考え方が理解できるというわけだ。
「画像認識や音声認識、検索、株価予測など結果が全ての用途では、ディープラーニング技術は、高精度かつ高速であり、適した技術だ。しかし、(生命に関わりを持つような)社会システムなどでは、最終的に人の判断が介在するため、異種混合学習技術が向いており、すでに多くの用途で導入されている」とする。
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