台湾MediaTekは、「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2016」(2016年5月25〜27日/東京ビッグサイト)に出展し、同社が提案する5G(第5世代移動通信)向け要素技術などを紹介した。売上高は好調だが利益面では厳しい状態となっているMediaTek。メディアテックジャパンのジェネラルマネジャーである櫻井義孝氏は、「5Gなど新しい市場に早く参入することが利益増加の鍵」と語る。
MediaTekは、WTP 2016内に設けられたNTTドコモのパビリオン「5G Tokyo Bay Summit」にブースを出展した。MediaTekとNTTドコモは2016年の「Mobile World Congress(MWC)」(2016年2月22〜26日、スペイン・バルセロナ)で、5G向けの技術開発および実証実験を共同で行うことを発表している。
両社が共同で開発するのは、周波数利用効率を上げる技術だ。同技術として、NTTドコモは「非直交多元接続(NOMA)方式」を、MediaTekは「マルチユーザー干渉キャンセル(MUIC)技術」を開発してきた。この2つを組み合わせた「MUST(MultiUser Super-position Transmission)」を開発し、5G向けにさらなる大容量化を目指すことが狙いだ。MediaTekでOffice of Chief Technology Officerのシニアマネジャーを務めるI-Kang Fu氏によれば、MUSTは、5Gの規格策定を進める3GPPが、2016年末に発行するRelease 14に採用される予定だという。MUSTの実証実験は2017年以降に開始する。この他、5Gの新しい無線インタフェースや、5G対応端末に必要なチップセットの開発についても、2018年以降の共同開発を検討していくという。
Fu氏は、「当社が5G向け技術において最も重要視しているのは、接続の信頼性だ」と話す。5G向けでは、ミリ波帯を使った通信の開発が進んでいて、MediaTekも38GHz帯通信を開発している。Fu氏は「こうしたミリ波帯の電波は障害物に弱く、減衰しやすい。そこで当社は、障害物に電波が遮られても、レシーバー側がトランスミッター側から発信された電波をトラッキングして受信する『ビームトラッキング技術』の開発に力を入れている」と説明した。
モバイル端末向けのターンキー・ソリューションで名を上げたMediaTek。売上高は、2014年、2015年ともに60億米ドルを超えた。売上高の約20%を技術開発に投資し、トムソン・ロイターが世界で最も革新的な企業や機関を選出する「Top 100 グローバル・イノベーター 2015」にも選ばれている。メディアテックジャパンのジェネラルマネジャーである櫻井義孝氏は、「MediaTekはテクノロジー・カンパニーとして認知されている」と述べる。
売上高の見通しについては「2016年第2四半期の売上高は前四半期比で25%増、前年同期比で10%増になる」とする一方で、利益率は厳しい状態だと明かす。
利益を伸ばしていく戦略の1つとして、MediaTekが次に狙う分野がIoT(モノのインターネット)だ。同氏は「IoTといっても幅が広いが、とりわけ、まだプレイヤーの少ないセルラーIoTを狙う」と話す。このためMediaTekは2015年にIoT事業部を設立した。モバイル機器やテレビ、STB(セットトップボックス)のビジネスで培った経験を生かし、IoTを通して最終的にはスマートホームを視野に入れていると櫻井氏は語る。
IoT事業に本腰を入れるMediaTekにとって、5Gは非常に重要だと櫻井氏は述べる。「5Gは、(民生分野や車載分野など)将来的にさまざまなビジネスに関わってくるからだ。そのため当社は5Gにいち早く投資し始めた」(同氏)。その成果の1つが、前述したNTTドコモとの提携である。MediaTekのFu氏は「台湾にはNTTドコモのような世界的な規模のキャリア(通信事業者)はいない。NTTドコモとパートナーシップを締結できたことは、MediaTekにとって大きな意味を持つ」と語る。
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