IMECは、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)を次世代メモリの最有力候補とみているようだ。
ベルギーの研究機関IMECでメモリ部門担当ディレクタを務めるArnaud Furnemont氏によると、「STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)は、28nmプロセスを使った組み込み不揮発メモリをめぐる争いにおいて、優勢のようだ」という。
同氏は、2016年5月24〜25日にベルギー・ブリュッセルで開催された「IMEC Technology Forum」において、EE Times Europeのインタビューに応じ、「ReRAM(抵抗変化型メモリ)やPCM(相変化メモリ)などをサポートする企業もあるが、これらのメモリは微細化の面で問題があるため、28nm CMOSプロセスへの対応は難しいだろう」と述べている。
28nm世代のプレーナ型CMOSプロセスは、モアザン・ムーア(More Than Moore)の開発にも十分対応できる、息の長いプロセスになるとみられている。ただしそのためには、微細化が限界といわれているNAND型フラッシュメモリに代わり、次世代不揮発メモリを選択する必要に迫られている。
ReRAMのベースとなる材料系は複数の候補があるため、それらをめぐって競争が繰り広げられている。ただし原理については、導電性フィラメントを形成したり閉じたりさせる方式が多い。ReRAMはスタンドアロンメモリで使われる可能性があり、少なくとも大規模アレイを実現するには課題が残るようだ。
Furnemont氏は、「フィラメント動作型ReRAMは、微細化できない。単一フィラメントしか形成できない上、そのフィラメントを安定させるためには約100μAが必要なためだ。クロスポント型ReRAMにおいて、クロスポイントの微細化を進めても、消費電力を減らすことはできない」と述べる。
正確な電流量は、材料系によって異なる。別の見方をすれば、アレイ寸法が大きくなれば、アレイのビットセル数の増加とともに消費電力量も増えるということになる。
IMECは、酸化ハフニウム(HfO2)と酸化タンタル(TaO)について、徹底的に研究したという。Furnemont氏は、「20nmプロセスでは、ある程度ReRAMを実現できる可能性がある。しかし、微細化が不可能であるということは、1世代のプロセス技術にしか適用できず、開発コストが非常に高くなるということだ。組み込み向けには適しているかもしれないが、スタンドアロンメモリには適さない」と述べている。
一方でPCMでは微細化が可能だと考えられる。Furnemont氏は、「非常に有望な選択肢であり、10nmプロセスまでの微細化を実現できる可能性を秘めている」と述べる。
ただし同氏は、28nmプロセス向けの本命の技術として、経済的な理由からMRAMを推奨している。マスクをたった3枚追加するだけで実装できる上に、CMOSとの互換性があるため、チャージポンプが不要なためだ。Furnemont氏は「Everspin TechnologiesがSTT-MRAMの出荷に向けて動いている」と述べる。同メモリの製造はGLOBALFOUNDRIESが請け負っている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.