パワー半導体の展示会「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日、ドイツ・ニュルンベルク)で、ROHM SemiconductorはSiCパワーデバイスの製品群を展示した。コスト面ではシリコンに比べて不利なSiCだが、業界では6インチウエハーへの移行も始まっていて、低コスト化が進むと期待されている。
2016年5月にドイツ・ニュルンベルクで開催されたパワー半導体の展示会「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日)で、ロームのドイツ法人であるROHM Semiconductor(以下、ROHM)は、主にSiCパワーデバイスを展示した。
ROHMの説明担当者によると、ROHMはSiCパワーデバイスをウエハーからモジュールまで包括的に提供できるのが強みの1つだという。
ROHMのプレジデント兼ロームの子会社であるSiCrystal(サイクリスタル)のチェアマンを務めるChristian André氏は、今回のPCIM EuropeでROHMが最も打ち出したいメッセージについて、「パワーデバイスのけん引役であるSiCデバイスをはじめ、SiCの駆動IC、デジタル電源制御IC*)といった周辺デバイスを含め、幅広いパワー製品ポートフォリオをそろえていることを示したい」と述べる。
*)ロームが2015年7月に買収したアイルランドPowervationの製品群である。
André氏は、欧州におけるSiCパワーデバイス市場について、「売り上げの点でみればSiC市場はまだ小さい。だが、特にここ3年ほどは、SiC技術に対する関心は高まっていると感じる。今回のPCIM Europeは、至る所でSiCパワーデバイスの展示をみかける。これは、5年前とはまったく違う。5年前は、SiCを展示していたのは当社くらいだったのではないか」という見解を示した。
SiCを適用できる用途は幅広い。太陽光発電システム、鉄道、電気自動車/ハイブリッド車、産業機器などだ。「最初のころは、SiCをけん引している市場は太陽光発電システムだった。ロームも同市場に3年以上、SiCパワーデバイスを投入している。太陽光発電システム向けのインバーターなどでは製品のサイクルが3年くらいと、鉄道や車載、産業機器の市場に比べて短いからだ」(同氏)。
SiCの大きな課題の1つはコストである。André氏は、「ディスクリートのデバイス単位で考えると確かにコストは高い。例えばSiC-MOSFETはSi-IGBTの3〜4倍ほど高くなる」としながらも、SiCを採用する時のコスト的な利点はシステム全体で考えることが大切だと述べる。「SiCパワーデバイスを用いることでキャパシターなどの受動部品やヒートシンクなど冷却機構を小型化できる。冷却機構が不要になるケースすらある。システム全体でみると、現在、平均で約10%のコストを削減できるとされている」(同氏)。
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