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SiC技術、成熟期はすぐそこに――ロームPCIM Europe 2016(2/2 ページ)

» 2016年06月13日 15時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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2017年末には6インチへ、8インチも開発の初期段階

ロームの6インチSiC-SBDウエハー

 André氏は、「ROHMとしてはマスマーケット(量産規模の大きい分野)を狙う」と述べる。そのための戦略として、2つの方向を考えているという。1つは、トレンチ型など新しい構造を取り入れることだ。ロームは2015年4月に、トレンチ構造を採用したSiC-MOSFETを発表している。もう1つはSiCウエハーの大口径化である。現在、ROHMでは4インチSiCウエハーから6インチへの移行を進めている。

 8インチについても開発の初期段階に入っている。ただし、これには時間を要するとAndré氏は話す。「SiCパワーデバイスは、SiCという非常に硬い物質を使う極めて複雑な技術が必要になる。SiCはダイヤモンドの次に硬い。ダイヤモンドを10とするとSiCは9くらいだ。そのため、製造が、技術的というより機械的に難しい」(同氏)。

 SiCに関する研究開発の歴史は古く、半導体デバイスとしての研究は1950年代から始まっている。ロームは既に10年以上、SiCの研究開発を手掛けてきた。2010年4月には「日本で初めてSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)を量産した」(ローム)。同年12月には「世界で初めて」(同)、SiC-DMOSFET(Double-diffusion MOSFET)を量産化している。それでもシリコンに比べれば市場規模は小さいが、André氏は「SiCパワーデバイス市場の成長は加速していて、6〜7年後には10億米ドルを超える規模になるとみている」と語る。

車載と産業分野に狙い

「PCIM Europe 2016」でのROHMのブース

 ROHMは、SiCパワーデバイスでは車載と産業機器に、より注力していく方針だ。「例えば、電気自動車のインバーターとオンボードチャージャーがターゲットになる。当社は既にオンボードチャージャー向けSiCパワーデバイスでは世界で80%のシェアを獲得している。だが80%といっても、売上高はほんのわずかにすぎない。売上高を拡大するためには、他の用途への普及促進と、フルSiCモジュールが鍵になる。現在ROHMのSiCパワーデバイス事業では売上高のほとんどがSiC-SBDが占めている。そのため、SiC-MOSFETや、SiC-SBD/SiC-MOSFETを搭載したフルSiCモジュールの拡販が次のステップだ」(André氏)。同氏は、モジュール化は、SiCパワーデバイスの利点をフルに引き出す鍵だと述べる。欧州にはこうしたモジュールメーカーが多く存在し、ROHMも、モジュールメーカー数社とパートナーシップを結んでいる。

技術的には成熟期に

 数年前まで、一般的にSiCパワーデバイスには、SiCの結晶の欠陥や酸化膜の寿命など幾つか重要な課題が残っているといわれていた。André氏は「現在は、技術的には成熟期に入りつつある」と語る。「(要件が厳しい)車載分野にさえSiCパワーデバイスを適用できるレベルになっている。SiCパワーデバイスにおける致命的な課題は2010年の量産時にクリアしており、採用実績の拡大とともに徐々に普及が進んでいると考えている」(同氏)。André氏は、SiCパワーデバイスの用途は広がっており、あとは、先述したように大口径ウエハーに移行するなどコスト構造を向上すればよいと続けた。

 André氏は、「SiCパワーデバイス事業は、“ビジネス”というより“開発プロジェクト”としてみられることも多い。だが、技術の成熟はすぐそこまで来ており、SiCパワーデバイスを採用したアプリケーションが目に見える形で提供され始めた。それが、SiCに対する関心を高める要素になっている」と語った。

 なお、ロームによると、現在ロームのパワーデバイス(高耐圧系のIGBT、MOSFET、ダイオード)事業では売上高の50%をSiCパワーデバイスが占めているという。

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