東芝は、アナログパワー半導体向け0.13μmプロセスを用いた静電気放電保護素子を開発した。従来の素子に比べて、静電気放電耐量は4倍に向上するとともに、放電耐量のばらつきを1/12に抑えることが可能となる。
東芝は2016年6月、アナログパワー半導体向け0.13μmプロセスを用いた静電気放電保護素子を開発したと発表した。トランジスター構造を最適化したことで、従来の素子に比べて静電気放電耐量は4倍に向上し、放電耐量のばらつきは12分の1に抑えた。3次元シミュレーションを用いた解析で、耐量が向上したメカニズムも明らかにした。
半導体素子は、帯電した人体などからの静電気放電によって、素子が破壊する可能性がある。このような半導体チップには、静電気破壊を防止するための保護素子が配置されている。ところが、電源電圧や電流が大きくなると保護素子自体もサイズが大きくなり、半導体チップを小型化するのが難しくなっていた。
東芝は今回、シリコン内部において電界が集中する箇所を電流が流れ、格子温度が上昇することが熱破壊の主な要因になることを、3次元シミュレーション技術によって解明した。そこで、トランジスターのドレイン側拡散層をソース側に延ばす構造とした。これによって、シリコン内の低抵抗領域を横方向に拡大した。また、高電界箇所のドレイン下部を流れる電流の経路を横方向に広げた。
このような構造とすることで、高電界箇所と電流経路が離れることとなり、静電気放電耐量を従来の4倍に向上させた。放電耐量のばらつきも12分の1に低減することに成功したという。この結果、充電電圧が±2kVの人体モデルに対応する静電気放電保護素子を、従来サイズから32%に縮小することができたという。
東芝は、0.13μm世代のアナログパワー半導体プロセスとして、車載向けを中心とした「BiCD-0.13」(DMOS耐圧は最大100V)、モーター制御向けを中心とした「CD-0.13BL」(DMOS耐圧は最大60V)、電源向けを中心とした「CD-0.13」(DMOS耐圧は最大40V)を、それぞれ用意している。今回開発した技術は、CD-0.13プロセスに適用して2017年度より製品化する予定である。
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