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多層CNT成長法を開発、3次元物体表面も簡便に粒子ブラスト法により、大気中で表面処理(1/2 ページ)

産業技術総合研究所(産総研)の渡辺博道主任研究員らは、マイクロフェーズと共同で、金属や炭素材料からなる3次元物体の表面に、多層カーボンナノチューブ(CNT)を成長させる簡便な方法を開発した。

» 2016年07月07日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

多層CNTの応用を光学機器などへ拡大

 産業技術総合研究所(産総研)物質計測標準研究部門熱物性標準研究グループの渡辺博道主任研究員と物理計測標準研究部門の石井順太郎副研究部門長らは2016年7月、マイクロフェーズと共同で、多層カーボンナノチューブ(CNT)を、金属や炭素材料からなる3次元物体の表面に成長させる方法を開発したと発表した。CNTの成長に必要な触媒担持層を、大気雰囲気中で容易に行える粒子ブラスト法を用いて形成することに成功した。

 CNTは、反射率がほぼゼロという特性を利用して、遮光材や発光体として用いる試みがなされている。ところが、CNT膜を作製するにはスパッタリング法など、真空中で高度な表面前処理を行う必要がある。このため、成膜加工できる物体の形状には制限があり、これまで光学機器などで遮光材として利用された事例はないという。

 そこで研究チームは、スパッタリング法を用いることなく、さまざまな金属や炭素材料の3次元形状の物体表面に多層CNT膜を成長させる手法を開発した。開発した技術を応用すると、円筒形状のレンズ鏡筒内部に多層CNT膜を直接成長させて、鏡筒内の散乱光を大幅に抑制することが可能になるという。

内部に突起があるタングステン製のるつぼの断面図と、内面に多層CNTを成膜する前後の写真。多層CNT膜の光吸収率がほぼ100%のため、突起を視認することができない 出典:産総研

 新たに開発した多層CNT成膜法では、研磨材としてアルミナ粉体を用い、粒子ブラストによる処理を行う。表面に残渣として堆積するアルミナ粉体は、CNT成膜に必要となる鉄触媒の担持層として活用する。

 研究チームは、開発した成膜法の汎用性や有用性を確認するため、タングステン(W)を含む18種類の金属や炭素材料の物体表面に、アルミナ粒子を用いて粒子ブラスト処理を行った。その後、処理済みの基板を加熱炉に入れ、基板付近に置かれた有機鉄化合物(フェロセン)の粉末が昇華して発生した鉄蒸気に曝して触媒を担持させた。さらに、アセチレン(C2H2)と窒素(N2)の雰囲気下で基板を加熱し、基板表面に多層CNT膜を成長させた。この結果、18種類の物体表面全てにおいて、多層CNTの黒色皮膜が均質に成長していることが分かった。

上図が開発したCNT成長法の概略図、下図は粒子ブラスト処理後と多層CNT膜成長後のタングステン基板の写真 (クリックで拡大) 出典:産総研

 粒子ブラスト処理後のタングステン基板表面に対して、走査式オージェ電子分光装置で観測したアルミニウム分布と、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した表面形状の画像を比較した。この結果、大きさがナノメートル単位のアルミナ残渣粒子が、表面の凹凸部へ局所的に堆積していることが分かった。

左が粒子ブラスト後のタングステン基板のSEM像、右はアルミニウム分布 出典:産総研
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