多層CNT成長法を開発、3次元物体表面も簡便に:粒子ブラスト法により、大気中で表面処理(2/2 ページ)
タングステン基板上に成長した多層CNT集合体の最表面をSEMで観察した後に、多層CNT集合体を剥ぎ取り、CNT単体の形状を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した。そうしたところ、直径7〜15nmの多層CNTが基板表面にランダムに配向していることが分かった。
左と中央が多層CNT成長させた後のタングステン基板のSEM像、右は多層CNT膜のTEM像 出典:産総研
次に、新開発の多層CNT成膜法を用いて成長させた表面(多層CNT黒化面)の放射率と、その波長依存性を調べた。そうしたところ、CNT黒化面の放射率は可視波長域で0.99以上、赤外波長域では0.985以上であった。従来の黒化塗料などの放射率(0.96程度)に比べて、今回得られた多層CNT黒化面は、極めて高い放射率となることが分かった。
多層CNT黒化面の可視波長域と赤外波長域の放射率の波長依存性を示した図 出典:産総研
粒子ブラスト処理という方法は、塗装前の自動車車体の表面前処理などに利用されている。大型で複雑な曲面をもつ3次元物体であっても、その表面を低コストで簡便に処理できるなどの特長を持つ。新たに開発した多層CNT成膜法を用いることにより、これまでのスパッタリング法ではできなかった、カメラや天体望遠鏡といった光学製品内部の黒化処理や標準光源(黒体炉)の高性能化が可能になるという。
- 産総研、2030年に向けた研究戦略を策定
産業技術総合研究所(産総研)は、2030年に向けた産総研の研究戦略を策定した。2030年の産業像や社会像を見据え、「超スマート社会(Society 5.0)」の実現など、大きく4つの研究目標を定め開発に取り組む。
- 産総研、ナノ炭素材料の新しい合成法を開発
産業技術総合研究所の徐強上級主任研究員らは、棒状やリボン状に形状制御されたナノ炭素材料の新しい合成法を開発した。キャパシターの電極材料への応用などが期待されるナノ炭素材料を、高い収率で量産することが可能となる。
- NECと産総研、AI開発加速させる連携研究室設立
NECと産業技術総合研究所は、2016年6月1日から人工知能(AI)を活用した「未知の状況下での意思決定」を可能にする技術の開発を行う連携研究室を設立すると発表した。
- 電気を通すラップの開発に成功
産業技術総合研究所(産総研)は2016年1月、電気を通す透明ラップフィルムを開発したと発表した。生鮮食品用の包装フィルムの他、曲面状のものにセンサーを実装できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.