技術計算ソフトウェアツール「MATLAB/Simulink」を提供するThe MathWorks。第5世代移動通信(5G)、IoT市場が拡大する中で、同社は「信号処理・通信」向けライブラリの機能を拡張し、「ビットからアンテナまでをサポートする」という。また、コード生成まで行う「ものづくりとしてのサポート」も進めることで、5G、IoT市場に価値の提供を行っていく。
技術計算ソフトウェアツール「MATLAB/Simulink」を提供するThe MathWorks(以下、MathWorks)。MATLAB/Simulinkは、航空宇宙や自動車、金融業界などのさまざまな領域で活用され、2015年の売り上げは世界で800億円、従業員は3500人を超える。
「MATLAB」は機能を拡張する開発環境であり、その中で数値処理を行うプログラミング言語のことも指す。「Simulink」はMATLAB上で動作する、ブロック線図などを用いたシミュレーションプラットフォームとなっている。
さまざまな領域で求められる要件に対応するため、同社は80種類以上のライブラリーを提供。その中でも、注力するのが第5世代移動通信(5G)、IoTの実現に貢献するライブラリー「信号処理・通信」という。MathWorksのアプリケーションエンジニアリング部で部長を務める山口貴久氏に、その詳細を聞いた。
信号処理・通信分野で多くの人々の関心を集める5G。5Gで特徴的なのは、4Gと比べて10倍に相当する超高速伝送、1ミリ秒以下の低遅延などが要件として求められることだ。
山口氏は「5G、IoT時代になる中、技術者にはチャレンジが求められている。昔は、それぞれの技術者に専門性があり、役割が分業されていた。しかし、半導体チップが1つに集積化され、アンテナまで含めて全ての面倒を見なくてはならなくなった」とする。
MATLAB/Simulinkの信号処理・通信向けライブラリーは、初期から提供するシステムアーキテクチャ設計に加えて、IC化に必要なデジタルハードウェア、RF/アンテナ設計などの機能を拡張している。山口氏は「ビットからアンテナまでサポート」と表現する。
レファレンスモデルの提供も行う。5Gでは、無線LANなどで活用されている5GHz帯をLTEでも利用可能にする技術の活用が検討されている。MATLAB/Simulinkは、無線LANとLTEのレファレンスモデルを既に提供しているため、開発者はそのレファレンスモデルを信号源としてシミュレーションが可能。開発期間を大幅に短縮できるという。また、アレイアンテナを用いたビームフォーミングのシミュレーション環境も提供している。
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