山口氏は、「MATLAB/Simulinkはシミュレーションだけでなく、モデルベースデザイン(MBD)を促進するツール。つまり、モノづくりまでサポートする」と語る。
一般的には、シミュレーションした仕様を紙に書き、その仕様をもとにエンジニアが、「Cコード」「HDL」などのプログラミング言語を用いて実装を行う。しかし、工程の間が分断されているため、求められていた要求が次の工程に十分伝わらず、開発終了間際になって問題が発覚し、開発期間が長引いてしまう。
MATLAB/Simulinkは、シミュレーションで設計した仕様の定義から、その詳細化、プロセッサやFPGAに実装するコード生成までシームレスに可能にする。「MATLAB/Simulinkで全ては解決できないが、カバレッジを広くし続けることで、全体的な特性でシミュレーションしたいというニーズに対応できる」(山口氏)とする。
MATLAB/Simulinkは、年に2回(春と秋)のアップデートを行っており、機能の拡張を進めている。直近だと、2016年3月にリリースした「R2016a」が最新バージョンだ。
R2016aでは、バジェット解析機能を追加。山口氏によると、バジェット解析はパワーやノイズなどの数値を計算する、RF設計に携わるエンジニアが必ず通る第一歩である。多くは「Microsoft Excel」で行われ、MATLAB/SimulinkもMicrosoft Excelと同様のことができる。特長的なのは、バジェット解析した数値をもとに、シミュレーションのモデルが生成される点だ。ものづくりのサポートまで行うことを意識したという。
他にも、RF回路専用のシミュレーター「Circuit envelope simulation」や基板の種類に応じたアンテナシミュレーション、アンテナ解析などの機能も追加している。
このように、MATLAB/Simulinkの信号処理・通信ライブラリーでは、「ビットからアンテナまでサポートする」機能拡張と、実装するコード生成まで行う「ものづくりとしてのサポート」を進め、5G、IoT市場に価値の提供を行っていくとする。
MATLAB/Simulinkの価格は、ツールの組み合わせによって異なり、最小の構成だと140万円、コード生成まで含めたオプション追加で600万〜2000万円としている。
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