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スマホ市場の“敗者”に残された道製品分解で探るアジアの新トレンド(7)(2/3 ページ)

» 2016年07月13日 11時30分 公開

失地回復のための新市場

 だが、スマートフォン市場での「富の再配分」によって締め出された者にも、次の一手があった。新市場での失地回復だ。それが、ウェアラブルやIoTだったのである。

 スマートフォン市場という“宝の山”では、その宝を山分けできるメンバーは決まってしまった。そこで、新市場であるウェアラブルやIoTなどの新しい財源を見つけて、そこから得られる利益を再配分できるようにしなければならない。スマートフォンは、コンパクトデジタルカメラや携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー、雑誌、PCなど既存製品を飲み込み、それらの市場さえも財源とした。

 このように、新しい財源を見つけて利益の再配分を始めることは、イノベーションとも呼べるだろう。

“エレクトロニクス海戦術”

 ウェアラブル市場が生まれたもう1つの背景は、人口問題である。人口は国富であるという時代が通り過ぎ、今や先進国の多くは少子高齢化の課題を抱える時代になっている。

 その最大の問題は近未来、極端な生産性の低下が予想されることである。今までは人海戦術を容易に組むことができ、その結果品質や生産性を維持できた。しかし「品質も生産性」も落とさずに従来の社会を維持しなければならないという課題があった場合、夢想と言われようとも「IoT」「ロボット」「AI(人工知能)」に取り組まざるを得ない状況になっていることも否めない。その結果として、人海戦術に代わる“エレクトロニクス海戦術”がIoTなのかもしれない(あくまでもシニカルな見方の言い回しである。産業としての期待を否定するものではない)。そしてウェアラブルもその一部として市場で扱われている。

 健康や睡眠、運動をエレクトロニクスによって可視化することで「予防医学」の補助となり、ヒトの豊かさにつながるというロジックだ。実際には旧来の万歩計や活動量計の機能を超えているわけではないが、スマートフォンやクラウドでのデータ管理によって、将来的には、予防医学としての高い成果を発揮するかもしれないとの期待も持たれている。 いつの日にかウェアラブル機器が「今すぐ病院に行きなさい。予約はしておいたから」とユーザーに通知する時代がくるかもしれない。

MediaTekの「Link It One」

 図2は、2014年に台湾MediaTekが、IoTやウェアラブル、ビーコンなどエッジ端末向けのプラットフォームとして発表した「Link It One」である。ウェアラブルやIoTの骨格となる通信機能としてWi-Fiチップ、Bluetooth搭載のARMマイコンが搭載されている他、位置情報を取得するために、GPS、GLONASS、北斗(中国の測位衛星システム)に対応するチップで構成されている。

 通信と位置情報チップはこのプラットフォームのために新規開発されたものではなく、スマートフォンやPND(ポータブル・ナビゲーション・デバイス)などで実績のあるものをそのまま流用している。新規チップはコアになる「MT2502」だけである。このチップは既に多くの中国製のIoT機器に採用されているが、用途としてはあくまでもマイクロコントローラーである。またMediaTek自身も本チップをMCU(Microcontroller Unit)とうたっている。

図2:Link It Oneのメインボードに搭載されているチップ(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 Link It Oneのプラットフォームは、センサー接続をターゲットにする。A-Dコンバーターのインプットは7つ。カタログでは奨励センサーが記載されるわけではなく「Your Sensors」と書かれている。「何でもどうぞ!」というスタンスだ。

 Link It Oneのチップは「MT2502」、図1のiaiwaiのC600が活用するチップは「MT6261A」。型名からは共通点は見いだせない。

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