産業技術総合研究所(産総研)の堂前篤志主任研究員らと寺田電機製作所は、クランプ型電流センサーで60Aまでの直流電流を、高い精度で計測できるポータブル電流計を共同開発した。EV(電気自動車)の開発現場や、直流給電が行われるデータセンサーなどにおける電流測定に向ける。
産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門応用電気標準研究グループの堂前篤志主任研究員、量子電気標準研究グループの金子晋久研究グループ長と、寺田電機製作所は2016年7月、クランプ型電流センサーで60Aまでの直流電流を、高い精度で計測できるポータブル電流計を共同開発したと発表した。EV(電気自動車)の開発やデータセンターにおける電力消費モニターなどの用途に向ける。
従来のクランプ型電流センサーは、取り扱いが簡便である半面、測定する状況によっては周囲の影響を受けることもある。例えばセンサー部の磁化(着磁)により誤差が生じるなど、測定精度を高めるには限界があったという。
そこで研究グループは、新たな構造の直流電流用クランプ型センサーと直流電流計を開発した。具体的には、電流計のクランプ型センサー部分に着磁した場合、それを検知して自動で消磁する機能や、ホール素子出力のオフセットとその変動を検知して補正する機能を開発し、採用した。
同時に機器を小型化する工夫も行った。新たに開発した直流電流計は、外形寸法が406×499×192mmのアタッシェケースに実装することができる小ささだ。持ち運びが容易で、センサー部を含めた電流計全体の重さもわずか約8.2kgと軽い。内蔵した電池のみで最大4時間の駆動を可能としている。商用コンセントを利用することができない車内や工事現場などでも測定業務を行うことができる。
研究グループは、開発したポータブル型電流計と従来型電流計を用いて、それぞれの測定誤差を評価した。この結果、開発したポータブル型電流計の測定精度は0.1%程度であることを確認した。この数値は従来型に比べると、精度が約10倍向上したことに相当するという。
研究グループは今後、共同開発品の早期製品化を目指す考えだ。さらに開発した技術を他の測定器にも応用していく考えである。
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