理化学研究所(理研)らの国際共同研究グループは、「ゲリラ豪雨予測手法」を開発した。スーパーコンピュータ(スパコン)「京」とフェーズドアレイ気象レーダーを用い、実際のゲリラ豪雨の動きを詳細に再現することに成功した。
理化学研究所(理研)計算科学研究機構データ同化研究チームの三好建正チームリーダーと情報通信研究機構、大阪大学らの国際共同研究グループは2016年8月、「ゲリラ豪雨予測手法」を開発したと発表した。スーパーコンピュータ(スパコン)「京」とフェーズドアレイ気象レーダーの両方から得られる膨大なデータを組み合わせ、解像度100mで30秒ごとに新しい観測データを取り込むことで、実際のゲリラ豪雨の動きを詳細に再現することに成功した。
スパコンを使った天気予報シミュレーションは、一般的に解像度が1km以上と粗く、観測データは1時間ごとに取り込んで更新するという。このため、積乱雲が発生し数分間で急激に発達するようなゲリラ豪雨の場合だと、発生する地域や時間を正確に予測することは困難であった。
国際共同研究グループは今回、「京」によるシミュレーションと、情報通信研究機構や大阪大学らが開発したフェーズドアレイ気象レーダーを使った。そして、両方から得られる膨大なデータを組み合わせるために、これまでとは桁違いのビッグデータを活用できる手法を開発した。これによって、実際のゲリラ豪雨の動きを、より詳細に再現することを可能とした。
最近の研究では、「京」を用いて解像度が100mあるいは10mの精度でシミュレーションを実行することも可能となった。高精度なシミュレーションを行うことで、ゲリラ豪雨を引き起こす可能性がある積乱雲を1つ1つ詳細に解析できるという。一方、大阪大学で運用中のフェーズドアレイ気象レーダーは、30秒ごとに分解能100mで半径60kmの範囲を検知することが可能である。
国際共同研究グループは、「京」を用いた解像度100mの高精細シミュレーションと、フェーズドアレイ気象レーダーで収集した膨大なデータを同化する「ビッグデータ同化」手法を開発した。これによって、30分後までのゲリラ豪雨を予測することが可能になったという。
2014年9月11日午前8時25分の神戸市付近における雨雲の分布図。左上はフェーズドアレイ気象レーダーの実測データ、左下はデータ同化をしないシミュレーションの結果、右上は解像度100mの「ビッグデータ同化」によるシミュレーション結果、右下は解像度1kmのデータ同化によるシミュレーション結果 出典:理研今回の研究では、ビッグデータを同化するために、約10分の演算時間を必要とする。研究グループでは今後、システムの実用化に向けて、収集した観測データを30秒以内に処理できるようデータ転送方法や高速演算技術の開発などを行い、リアルタイムなゲリラ豪雨予測を実現していく計画である。
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