2016年1月に起こった軽井沢のスキーツアーバス転落事故以降、長距離高速バスや貨物自動車の安全対策が問題視されている。ドライバーの居眠り対策もその1つだ。そうした中で富士通は、居眠り検知のウェアラブルセンサーとして「FEELythm(フィーリズム)」の展開を始めた。FEELythmが面白いのは、腕でもなくメガネとしてでもなく、“耳たぶ”に装着することだ。なぜ、耳たぶを選択することになったのだろうか。FEELythmの販売推進に携わっている楠山倫生氏に話を聞いた。
2016年1月、長野県軽井沢の国道18号線碓氷バイパス入山峠付近でスキーツアーバスの転落事故が起こった。乗員乗客41人のうち、運転手2人を含む15人が亡くなる事故となり、長距離高速バスにおける安全対策が大きな社会問題になったことが記憶に新しい。
警視庁の「平成25年度中の交通事故発生状況」によると、事故の約7割が「安全不確認」や「脇見運転」などのヒューマンエラーに起因する。その中でも現在、居眠りなどの「漫然運転」が注目されているという。事業用貨物自動車の事故(全日本トラック協会調べ)において、眠気を伴った漫然運転が死亡事故などの大事故になる確率が高いからだ。安全運転や脇見運転はこれまで、デジタルタコグラフ(デジタコ)の搭載やドライブレコーダ―の設置が行われてきたが、居眠りへの対策は少ないのが現状だ。
そこで、富士通が2015年1月に発表したのは眠気を検知するウェアラブルセンサー「FEELythm(フィーリズム)」である。ウェアラブルと聞くと、腕時計やメガネ型をイメージする人が多いだろう。FEELythmが面白いのは“耳たぶ”に装着することである。なぜ、耳たぶなのだろうか、同社ユビキタスビジネス事業本部の第一ユビキタスフロントセンターでアシスタントマネジャーを務める楠山倫生氏に話を聞いた。
FEELythmは、首にかける本体部分と耳たぶに取り付けるセンサー部で構成されている。本体はバッテリーを備え、通信機能(Bluetooth Low Energy)、バイブレーション機能を持つ。重さは約90g。1日の運転時間9時間×5日間=45時間の連続使用ができるという。
センサーは、脈波(心拍変動:RRI)を取得し、ドライバーの眠気状態を検知。本人が自覚していない「眠気予兆」と、「眠気検知」の段階で分けて通知を行う。通知は、バイブレーションに加えて、スマートフォンやデジタコからの音声通知が可能である。
最大の特長は、同社独自のアルゴリズムにある。ただ脈波を取得するだけでは、高精度な眠気検知を行うのは難しい。FEELythmでは、取得したデータを周波数解析し、ドライバーに合わせた眠気判定基準値を自動で算出する。機械学習によって、個人差や日々の健康状態による精度のばらつきも解消し、正確な検知を行うのだ。
楠山氏は、「精度は何%かと聞かれることが多い。しかし、脈波は個人差や日々の健康状態によって変わるため、100%の精度には絶対ならない。そのため、FEELythmは独自のアルゴリズムと機械学習で、100%により近づけていくイメージ」と語る。
また、運行管理システムと連携することで、運行管理者に対しても検知した情報を通知でき、客観的なデータに基づいた運行マネジメントが可能になるとしている。
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