東京大学の香取秀俊教授らによる研究グループは、光格子時計を用い直線距離で約15km離れた2地点間の標高差を精度5cmで測定することに成功した。将来は、火山活動やプレート運動など、地殻変動(標高変化)を精密に監視することも可能になるという。
東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授と国土地理院の研究グループは2016年8月、光格子時計を用いて直線距離で約15km離れた2地点間の標高差を精度5cmで測定することに成功したと発表した。開発成果を用いると、火山活動やプレート運動など、地殻変動(標高変化)を精密に監視することも可能になるという。
光格子時計は光時計の1種で、香取氏が2001年に考案し、2003年に実証した高精度な原子時計である。光格子時計は、「光格子」と呼ばれる光の波長より小さな領域に、原子を閉じ込めることによって、多数個の原子を同時に観測することができる。光格子は「魔法波長」と呼ばれるレーザー光を干渉させて作り出す。
香取氏らの研究グループは、2台の低温動作ストロンチウム光格子時計を開発して精度を比較した。そうしたところ、周波数は約10-18の精度で一致することが確認された。これは従来のセシウム原子時計に比べて、100倍近い精度だという。
高い測定精度を追求する一方で、「重力が強いところでは、時間がゆっくり進む」という、アインシュタインの相対論の効果を応用して、精度の高い時計で標高差測定を行う測位技術が注目を集めている。
そこで研究グループは、先行研究で開発した「低温動作ストロンチウム光格子時計」を使い、東京大学(東京・本郷)に1台、理化学研究所(埼玉・和光市)に2台、合計3台をそれぞれ設置。直線距離で約15km離れた2拠点間を、長さが約30kmの光ファイバーで接続して、遠隔地比較実験を行った。
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