中国メーカーのスマートフォンは当初、AppleやSamsung Electronics製スマートフォンの発展の後をたどるように進化してきた。だが、進んで最先端プロセッサを搭載するようになると、スマートフォンの進化に伴う課題も、自ら率先して解決法を見いだすことが求められるようになる。
中国のスマートフォンメーカーの台頭が著しい。トップを走るHuawei、Lenovo、OPPO、Xiaomiなどは今では日本のユーザーにも名前が浸透し、スマートフォン市場ではApple、Samsung Electronicsに次ぐ第3の勢力となって怒涛(どとう)の展開を繰り広げている。
多くは3つの段階を経て成長した。第1期は2010〜2012年で、これは先人たるAppleやSamsungの模倣時期である。当時の先端スマートフォンよりも若干性能の劣るミドルハイクラスのスマートフォンやタブレットを数多く輩出した。当時から中国メーカーはQualcommや台湾MediaTekのチップセットやプラットフォームを活用したが、特に最先端のチップセットを活用するわけではなく、普及の進んでいるチップセットを流用しているにすぎなかった。
第2期は2013年以降である。Qualcommらの最先端プロセッサを世界で初めて採用するケースが増えてくる。実際、QualcommのSoC(System on Chip)「Snapdragon 800」を世界で最も早く搭載したのはXiaomiであった。同時に中国国内の半導体メーカーもSnapdragonに劣らないプラットフォームを構築し、自社スマートフォンに活用し始める。Huawei傘下の半導体メーカーであるHiSiliconは、Snapdragon(dragon=龍)に対抗する「Kirin(麒麟[きりん])」プラットフォームを構築、Huaweiスマートフォンに活用されている。
その後、ハイエンドチップで先行するQualcommやHiSiliconをキャッチアップするべく、MediaTekも率先して8コアチップをリリースするなど、差別化に重きを置くようになってきた。
最新チップを率先して採用するようになった中国メーカーにとって、最も重要なのは性能の確保である。今までは先行するAppleやSamsungを模倣していればよかった(必ずしも模倣ではないが、スマートフォンという当時の新製品はかなり研究されたはずだ)。
しかし、先端チップを使うようになれば、多くの問題は自分たちで解決しなければならなくなる。
スマートフォン用のプロセッサは過去数年、著しい進化を遂げてきた。1チップに搭載されるCPUコアの数は1コアから2コア、4コア、8コアと増加の一途をたどっている。GPUも据え置きゲーム機に匹敵する性能を備えるようになり、720pから1080p、そして1440pから4Kへとディスプレイ表示や動画性能も高まっている。
これらの性能が実現されている裏には、半導体製造技術の著しい進化があったのは言うまでもない。90nmプロセステクノロジーから始まったスマートフォン向け半導体は、65/55nm、45/40nm、32/28nm、22/20nmを経て、今や16/14nmが主流になっている。実に6世代もプロセスが進んでいるのだ。
1世代の進化当たり、おおよそ倍の規模の回路搭載が可能になるので、6世代の進化の結果、90nm世代に比べて、16/14nmでは、単純計算になるが32倍の規模の回路を搭載できることになる。
回路規模ばかりでなく、チップの動作周波数も大幅に高くなった。半導体の微細化によりトランジスタ幅が短くなったことで、スイッチングが速くなったからだ。当初、スマートフォン向けアプリケーションプロセッサの動作周波数は500MHzだった。それが、1GHz、1.5GHz、2GHzと速くなっていき、現在では2.5GHzが一般的になっている。
周波数が上がり、規模が増大することでスマートフォンのプロセッサにおいては、これまでにない新たな課題が出てくるようになった。かつては、1GHzの動作周波数を達成することや4コアを搭載すること自体が課題であったのだが……。
図1は、Xiaomiが2016年に発表したスマートフォンのフラグシップモデル「Mi 5」である。Mi 5は、Qualcommの最新プラットフォームである「Snapdragon 820」を搭載していて、裏表どちらでも挿入できる(リバーシブル)USBの新コネクター規格USB 3.1 Type-Cを備えている。2016年2月に発表、発売されている。
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