現在、スマートフォンの設計における最大の課題は、プロセッサの発熱問題である。CPUは2GHz以上で動作する上に、4コア、8コアが当たり前である。かつてPCでも発熱は最大の課題の1つであった。PC用プロセッサの周波数が高くなり、コア数が増えることでプロセッサの発熱は大きくなる。そのためPCでは空冷装置、水冷装置、ヒートシンクなどの対策が行われた。
PCはスマートフォンに比べてサイズが大きい(体積が大きい)ため、空冷装置やヒートシンクは大いに普及した。
しかし、スマートフォンには空冷装置を入れるスペースはない。多くのスマートフォンメーカーは発熱という課題に対してそれぞれの対策を行っている。
図2は、2016年を代表する3機種スマートフォンの内部の様子である。スマートフォンは、外観こそ似通っているが、内部の構造はいまだに、メーカーの機種ごとにバラバラで、まったく別物になっている。
Samsungはプロセッサの発熱に対して、プロセッサの下に「ヒートパイプ」という放熱装置を配置することで、スマートフォンの上下方向に熱を逃がしている。Appleはアプリケーションプロセッサとベースバンドプロセッサを統合せずに、これら2つを離して実装している。加えて、OSの最適化などを行いプロセッサの動作周波数を下げることで発熱を抑える設計にしている。例えば、他社のスマートフォンの動作周波数が2.5GHzのところ、「iPhone 6s」のプロセッサコア「A9」の動作周波数は1.85GHzと、3割ほど下回っている。さらに、他社が8コアでも、A9は2コア構成になっている。
図3は、XiaomiのMi 5のプロセッサ側基板とスマートフォン内部のフレームの様子である。Mi 5ではプロセッサ基板とフレームが凸凹でぴったりハマるように設計されており、フレーム(=ボディー)全体で放熱を行う構造になっている。詳細写真を掲載していないが、実際には、チップ表面に保冷材や保冷ネットを装着し、その上でフレームに設置させている。
これまで中国メーカーは、これらの課題についても、AppleやSamsung、日本メーカーらの対策をトレースすることで解決してきた。だが自身が先頭に立つということは、発熱問題の他、ノイズの問題など、スマートフォンの仕様だけでは見えてこない問題も、自分で解決する必要に迫られるということなのである。今やこれらの課題も、中国メーカーが率先して取り組む時代が来ているのだ。
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