90nm世代から商業化が始まったArF液浸スキャナーだが、3xnm世代に入ると、解像力は限界に達する。そこで、コスト増というデメリットは伴うものの、マルチパターニングによって解像力の向上が図られてきた。加えて、7nm世代向けのArF液浸スキャナーでは新しいリソグラフィ技術の導入も必要だとされている。この場合、コスト面ではダブルパターニングと電子ビーム直接描画の組み合わせが有利なようだ。
半導体製造装置と半導体製造用材料に関する北米最大の展示会「SEMICON West 2016」が7月12日〜14日に米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催された。12日には「FORUM」(フォーラム)と称する併設の講演会があり、専門テーマに関する解説や展望などを数多くの研究者や技術者、経営者などが発表した。
前回までは、ニコンの米国子会社であるNikon Research Corporation of AmericaでDirector of Computational LithographyをつとめるStephen Renwick氏の講演を補完する目的で、露光技術の進化を1960年代から2000年代まで振り返った。この期間に、半導体製造の最小加工寸法は100分の1以下にまで微細化された。
今回は、Stephen Renwick氏による講演の要約をお届けする。
前回の末尾で説明したように、最先端の縮小投影露光装置はArFレーザーを光源とするArF液浸スキャナーである。ArF液浸スキャナーの商業化は90nm世代品から始まり、65nm世代品で主流となり、45nm世代品、40nm世代品と改良されていった。しかし3xnm世代に入ると、ArF液浸スキャナーの解像力は限界に達する。
解像力を計算するレイリーの式、解像力(R)=ケイワンファクタ(K1)×波長(λ)/開口数(N.A.)から、193nmの波長と1.35のN.A.、0.30のケイワンファクタを代入すると解像力(R)は43nmと出る。二光束干渉の限界(理論上の解像限界)である0.25のケイワンファクタを代入すると、解像力(R)は36nmとなる。つまり、限界解像度は36nmであり、実際の解像限界は37nm〜43nmにあることが分かる。
このことの裏付けが、Nikonが示した、縮小投影露光装置による解像力の推移だ。2010年にArF液浸スキャナーの解像力が40nm弱に達した後は、解像力が変わっていない。現状、露光装置(ハードウェア)による解像度の向上は行き詰まっている。
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