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「SEMICON West 2016」、半導体露光技術の進化を振り返る(完結編その2)福田昭のデバイス通信(85)(1/2 ページ)

KrFスキャナーの次に登場したのがArFスキャナーである。ArFスキャナーは90nm世代の量産から使われ始めた。さらに、ArFスキャナーの製品化と並行して「ポストArF」の開発が活発化する。ポストArFとして、F2エキシマレーザーあるいは軟X線を光源とする露光技術の開発が進んだが、そこに、もう1つの候補として急浮上したのがArF「液浸」スキャナーである。

» 2016年08月30日 13時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

KrFスキャナーからArFスキャナーへ

 半導体製造装置と半導体製造用材料に関する北米最大の展示会「SEMICON West 2016」が7月12〜14日に米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催された。12日には「FORUM」(フォーラム)と称する併設の講演会があり、専門テーマに関する解説や展望などを数多くの研究者や技術者、経営者などが発表した。

 前回は、ニコンの米国子会社であるNikon Research Corporation of AmericaでDirector of Computational Lithographyを務めるStephen Renwick氏の講演を補完する目的で、露光技術の進化を1990年代半ばから2000年代初頭まで振り返った。

半導体露光技術の歴史。Nikon Research Corporation of Americaが講演で示した年表を日本語に翻訳したもの(一部、意訳を含む) (クリックで拡大)

 前回の末尾で説明したように、KrFスキャナーは130nm世代の半導体チップの量産に使われた。KrFスキャナーの解像限界は130nm〜120nmであり、次世代の90nm世代には、新たな技術の導入によって半導体露光の解像度を高める必要があった。その本命は、KrFエキシマレーザーよりも短波長のArFエキシマレーザーを光源とする、ArFスキャナーである。ArF露光装置の開発は1990年ごろに始まり、2001年ごろにはArFスキャナーがほぼ完成の域に達した。

 ArFエキシマレーザーの発振波長は193nmで、KrFエキシマレーザーの発振波長248nmに比べると、0.78倍になる。言い換えると、原理的には微細加工寸法を22%ほど短くできる。

 当初、ArFスキャナーは130nm世代に使われるとされていたが、装置コストの高さから、導入は遅れた。実際には装置コストが低いKrFスキャナーが130nm世代の量産に使われた。そして90nm世代の量産で、ArFスキャナーの普及が始まった。2004年ごろのことである。

ArFスキャナーの製品例。筆者が公表資料を基にまとめたもの(クリックで拡大)

ArFスキャナーの次をめぐる開発競争

 半導体リソグラフィの研究開発コミュニティーでは当初、ArFスキャナーは90nm世代だけの露光技術だと見なされていた。野球の投手で言えば「ワンポイントリリーフ」あるいは「中継ぎ」に近い。

 このため、ArFスキャナーの製品化と並行して、研究開発コミュニティーでは「ポストArF」の開発が活発になった。考えられていたプランは2つあった。いずれも光源の波長を短くした露光技術だ。

 1つは、KrFレーザーやArFレーザーと類似の、F2エキシマレーザーを光源とする露光技術である。F2エキシマレーザーの発振波長は157nmで、ArFエキシマレーザーの193nmと比べて波長が0.81倍と短い。従って原理的には、加工寸法を19%ほど短くできる。具体的には65nm世代(90nm世代の次の世代とされていた)を目標に開発が進められた。

 もう1つは軟X線を光源とする露光技術である。波長は13.5nmと極めて短い。原理的には65nm世代はもちろん、45nm世代や32nm世代などにも通用すると考えられていた。なおこのころは軟X線リソグラフィではなく、「EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)リソグラフィ」と呼ぶようになっていた。

 なお、過去にX線リソグラフィの補助金を米国の業界団体が連邦政府から得ていたため、新たに研究補助を申請する際に「X線」という名称が使えなかった。そこで代わりに「EUV」の名称であらためて研究開発資金の援助を申請したので、呼称が「EUV」に変更されたといわれている。

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