大手レジストベンダーJSR Microの講演では、主に同社とimecの共同開発の内容が発表された。その1つが、JSR MicroのEUV(極端紫外線)レジストをimec所有のEUV露光装置で評価するというもので、化学増幅型のEUVレジストによってハーフピッチ13nmの平行直線パターンを解像できたという。さらに、5nm世代のEUVリソグラフィの目標仕様と現状も紹介された。
半導体製造装置と半導体製造用材料に関する北米最大の展示会「SEMICON West 2016」が7月12〜14日に米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催された。12日には「FORUM」(フォーラム)と称する併設の講演会があり、専門テーマに関する解説や展望などを数多くの研究者や技術者、経営者などが発表した。
中でも興味深かったのは、「Lithography: Charting a Path, or Paths, Between Nodes 10 and 5」と題する専門フォーラムである。次世代のリソグラフィ技術を展望するフォーラムだ。前回はこのフォーラムから、ASMLでStrategic Marketing担当ディレクターを務めるMichael Lercel氏の講演概要の講演の概要をご紹介した。
今回は同じフォーラムから、大手レジストベンダーJSR Microの半導体事業担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるMark Slezak氏の講演概要をご報告する。講演タイトルは「The Materials Path from 10nm to 5nm」である。
講演では始めに、7nm以降のリソグラフィを想定したときに、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術とArF液浸マルチパターニング技術が有力候補なのだが、どちらも技術的な課題を抱えているとした。JSR Microはimecと共同でEUVリソグラフィ向けのレジストを開発している。講演では大半の時間を、EUVレジストの研究内容に割いていた。
JSR Microとimecの共同開発とは、JSR Microが開発したEUVレジストを、imecのEUV露光装置(ASMLのNXE3300)で評価するというものである。講演では、化学増幅型のEUVレジストによってハーフピッチ13nmの平行直線パターン(ラインアンドスペース(L&S))を解像できたことを述べていた。露光に必要なエネルギーはハーフピッチ15nmのL&Sが41.6mJ(ミリジュール)/cm2、同14nmのL&Sが40.0mJ/cm2、同13nmのL&Sが36.8mJ/cm2である。
ハーフピッチ12nmのL&Sはパターンの乱れがひどくなるものの辛うじて平行直線パターンを形成できている。これがハーフピッチ11nmになると隣接する直線が曲がって接触するといった明らかな不良が頻出するようになる。
ハーフピッチ15nmのL&Sを解像するときの課題は、感度の向上である。そこで酸の拡散距離(Acid Diffusion Length)を短くした化学増幅型レジストを開発し、感度の向上とパターン品質の向上を両立させた。
ハーフピッチ15nmのL&Sで露光エネルギー(平方センチ当たり)は先述の41.6mJから、新型レジストでは25.2mJと4割も減少した。また線幅の粗さ(LWR:Line Width Roughness)が先述の事例では5.9nmであったのに対し、新型レジストでは5.3nmに減少した。
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