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高速・大容量の秘匿光通信システムを実現QAM型QNSC方式と4値QKD方式を組み合わせ(1/2 ページ)

東北大学の中沢正隆教授らによる研究グループは、量子雑音ストリーム暗号と量子鍵配送の技術を組み合わせることにより、極めて安全で高速かつ大容量の秘匿光通信システムを実現した。

» 2016年09月26日 11時00分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

単一チャネル70Gビット/秒のデータ速度で100km伝送

 東北大学電気通信研究所の中沢正隆教授と学習院大学の平野琢也教授らによる研究グループは2016年9月、量子雑音ストリーム暗号と量子鍵配送の技術を組み合わせることにより、極めて安全で高速かつ大容量の秘匿光通信システムを実現したと発表した。

 開発した秘匿光通信システムを用いて実験を行ったところ、共通鍵を1秒ごとに更新しながら、単一チャネル70Gビット/秒の高速暗号データを、100km伝送することに成功した。周波数利用効率も10.3ビット/秒/Hzと極めて高いことが分かった。

 高度な情報通信システムにおいては、機密情報などの漏洩を防止するためのセキュリティ技術が不可欠となっている。このために、量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)技術などが完全秘匿暗号方式として提案されてきた。

 その1つとして4値QKD方式がある。この方式は、単一光子に近い微弱なレーザー光に4値の位相変調を与えて鍵の情報を送信する技術である。受信側では、強度の高い局発光を用いて量子雑音限界のホモダイン検波を行う。この方式の特長は、光通信用の一般的な素子を活用することができるため実用性が高いことだ。半面、受信者に対して通信文と同じ長さの使い捨て共通鍵を配送する必要があり、鍵配送の速度(数百kビット/秒)によって量子暗号の速度が制限されてしまうという課題もあった。

4値QKD方式の原理 出典:東北大学

 東北大学は、直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)方式のデータを、量子雑音の中に埋もれさせて暗号化する量子雑音暗号(QNSC:Quantum Noise Stream Cipher)伝送方式を2013年に提案した。この技術を用いると、共通鍵を保有する正規受信者は正しい情報を安全に受信できるのに対して、鍵を持たない盗聴者はデータを正確に受信(復元)することができなくなる。

 例えば、16QAMデータを暗号化する場合、送信者は送信データと鍵をシンボルごとに2つのブロックに分ける。片側はIチャネル、もう片側をQチャネルに割り当てる。そしてIチャネルとQチャネルの位相を90度ずらして足し合わせ、QAM信号を生成する。この信号に、レーザーや光増幅器からの量子雑音が付加されると、信号がIとQの両方向に乱されるという。この結果、IとQ両方の鍵を持つ正規受信者は、それぞれを正しく受信してデータを完全に復元することができる。しかし、鍵を持っていない盗聴者はデータを正しく復元することができない仕組みである。

QAM型QNSC方式による暗号化の原理。緑色がI、青色がQチャネルに対応 (クリックで拡大) 出典:東北大学

 なお、QAM型QNSC方式は、データ信号として2NQAMを用いるため、1つの信号でNビットの情報を送ることができる。このため、周波数の利用効率は大幅に改善され、伝送容量も増大させることが可能である。半面、共通鍵を送受信者間であらかじめ共有しなければならないなど、安全面での課題もあった。今回は、QAM/QNSC方式において、共通鍵のみをQKD方式でオンライン伝送するなど、安全性をさらに高める方式も考案した。

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