――今回来日するに当たって、教育に関する新しい取り組みを日本で始めると聞きました。どのような取り組みですか。
Mitchell氏 欧米の会員メーカーはIPC規格を社内でも学習している。IPC規格の認定を受けた技術者が何人いるかを明示して、製造委託や調達の際に有利になるように動いている。IPC側もこのような取り組みを支えるためにWebサイトで企業ごとの認定者の人数を公開している他、全世界に100カ所以上の教室を設けている。
ところが日本にはまだこのような教室が1つもない。そこで、スマートフォンなどを利用してインターネット経由で日本語版のIPC規格を学習できる教材を作り上げた。IPC-A-610の全体を講師が語る動画から学ぶことが可能になる。IPCの総合代理店を務めるジャパンユニックスと協力して、2016年1月から開発を開始、ほぼ完成したところだ。日本ではインターネット経由の学習と合わせて、教室も一気に拡充しようと考えている。
――政府の規制に関するIPCの活動にはどのような特徴がありますか。
Mitchell氏 例えば鉛フリーはんだやRoHS規制では、政策として固まる前に政府が試案を作り上げていた。この段階では危険性がはっきりしないさまざまな物質が取り上げられていた。複数のエレクトロニクスメーカーが得た安全性に関するデータを政府に伝えることで、危険な物質と安全な物質をうまく切り分けることができたと自負している。政府側も巨大企業以外からデータを入手する窓口が不足しているため、IPCの活動は喜ばれている。
ごく最近では中国政府が2016年以降に導入を計画していた規制がIPCの動きによって中止されたという事例がある。中国政府はめっきなどで使う金のシアン化物の利用を全面的に禁止しようとしていた。だが、プリント基板メーカーなどが持っていた取り扱い安全性に関するデータを提出したことで、禁止措置には至らなかった。
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