10nm世代から7nm世代、5nm世代の配線パラメータと、配線による遅延時間を展望すると、厳しい将来が浮かび上がって来る。なお配線ピッチを10nm世代では48nm〜42nm、7nm世代では36nm〜28nm、5nm世代では24nm〜20nmと仮定した。
まず配線抵抗(R)である。配線長(μm)当たりの抵抗値は配線ピッチの短縮とともに急速に上昇していく。エレクトロマイグレーションの問題が厳しくなる銅(Cu)に換わり、金属配線はコバルト(Co)またはルテニウム(Ru)を主材料とするようになる。
10nm世代ではμm当たりの抵抗値は100Ω未満でそれほど高くはない。ところが7nm世代では200Ω〜400Ωに上昇する。そして5nm世代では900Ω〜1200Ωという、金属配線なのに抵抗素子のような値にまで、高くなってしまう。
続いて配線容量(C)である。容量(C)は、配線長(μm)当たりで1.5fF〜2.0fFを維持していくことが求められる。いやむしろ、世代ごとに下げていくことが望ましい(配線抵抗が上昇するので)。すると層間絶縁膜の比誘電率は、2.4が最大水準となり、微細化とともに2.2、さらには2.0へと下げることが求められる。
そしてRC積(遅延時間)は、微細化とともに抵抗(R)が増大するので、当然ながら伸びていく。10nm世代では、単位面積(平方μm)当たりのRC積(遅延時間)は20fs(フェムト秒)前後と非常に短い。ところが7nm世代では、配線ピッチが狭まるとともに40fsから100fs(0.1ps)と急激に増加していく。5nm世代では、単位面積(平方μm)当たりのRC積は200fsに達する。ただし、層間絶縁膜の比誘電率を2.0に下げることでRC積を140fsにまで下げられる。
これらの事実は、従来の配線技術(銅(Cu)の配線材料と比誘電率2.5の層間絶縁材料)では微細化に対応できないことを示している。新しい技術の導入によって配線抵抗(R)と配線容量(C)を最適化しなければならない。
(後編に続く)
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