ルネサスは、現在ドイツ・ミュンヘンで開催されている「electronica 2016」(2016年11月8〜11日)で、IoT(モノのインターネット)/組み込み機器向けの設計プラットフォーム「Renesas Synergyプラットフォーム(以下、Synergy)」のデモを展示している。ファクトリーオートメーション(FA)をけん引する欧州を意識して、高精度のアナログIP(Intellectual Property)をSynergyに追加する予定だという。
ルネサス エレクトロニクスが、IoT(モノのインターネット)/組み込み機器向けの設計プラットフォーム「Renesas Synergyプラットフォーム(以下、Synergy)」の提供を開始してから約1年が経過した。Synergyは2015年10月に、まず米国で提供が開始され、日本国内では同年12月から提供されている。以降、インドや台湾、韓国、そして直近では2016年10月に中国での提供を開始した。
欧州では、2016年2月にドイツ・ニュルンベルクで開催された『embedded world』において本格的に提供を開始している。Renesas Electronics Americaで、Internet of Things(IoT)ビジネスユニットのバイスプレジデントを務めるPeter Carbone氏は、欧州でのSynergyの事業に予想以上の手応えを感じているという。「Synergyを欧州市場に本格的に投入して以降、サードパーティーやディストリビューターを通してセミナーなどを開催し、拡販に努めてきた。その結果、Synergyの売上高の地域別比率は、米国と欧州が40%、アジアが20%と、欧州が、Synergyの提供を最初に開始した米国と肩を並べるまでになった」と語る。同氏によると、現在Synergyの登録ユーザー数は約4000で、そのうち1200が欧州だという。
Synergyがターゲットとする分野は、家電、ビルディングオートメーション(BA)、スマートメーター、工場(ファクトリーオートメーション(FA))、メディカルの5つだが、欧州では特に家電、FA、スマートメーターの市場に注力していく。「欧州では、これら3つの市場、とりわけFAが大きい。FAの分野では、センサーからのデータ処理に極めて高精度なアナログ回路が必要になる。そのためSynergyでも、FAをターゲットに高精度なアナログIP(Intellectual Property)を追加する予定だ」(Carbone氏)
Synergyの今後2〜3年の開発計画についてCarbone氏は、「まず、2017年には、メモリ容量や処理性能、周辺機能のバリエーションをさらに増やす。前述した通りFA向けでは高精度なアナログIPを、BA向けには、照明制御規格のDALI(Digital Addressable Lighting Interface)に対応したIPなどを追加する予定だ」と述べた。
2018年には、Synergyの専用マイコンのマルチコア化を進める。具体的には、ARMの「Cortex-M23」「Cortex-M33」コアを用いたものがラインアップに加わる。Cortex-M23/Cortex-M33は、ARMが2016年10月25日(米国時間)に発表したばかりのコアで、「ARMv8-M」アーキテクチャを採用するものになる。Synergyの専用マイコンでは、Cortex-M33をメイン、Cortex-M23をサブとする「big.LITTLE」構成とし、Cortex-M33をアプリケーションプロセッサとして、Cortex-M23はパワーマネジメント用として使用する予定だ。Cortex-M23/Cortex-M33を用いたSynergyマイコンの開発は、2016年末から開始する。製品化は2018年を予定しているという。
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