産業向けIoTを実現できれば、機器のダウンタイムを短縮でき、効率的な保守管理が可能になる。運用コストの大幅な低減だ。そのためにはセンサーとクラウド以外にも必要な要素がある。Hewlett Packard Enterpriseの責任者に聞いた。
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産業向けIoTを実現しようとしたとき、センサーとクラウドの組み合わせだけでは十分な効果を発揮できない。なぜだろうか。
日本ナショナルインスツルメンツ(以下日本NI)が主催した計測・制御関連の技術イベント「NIDays 2016」(2016年10月26日、東京)の基調講演では、米国の大手ポンプメーカーFLOWSERVEの事例を取り上げ、理由を示した(図1)。
産業用ポンプにIoTを適用した場合のメリットは、大幅なコスト削減だ。理由は3つある。
第一に、常にポンプの状態を監視することで、異常を検知し、予期しないダウンタイムを避けることが可能になる。第二に、個々の部品ごと最適なメンテナンスのタイミングを把握できる。定期的な部品交換に頼っていると、まだ利用できる部品まで新品と換えなければならない。第三に長期的なデータを取得することで、なにが異常の前兆となるのか、パターンを発見し、分析モデルを作り上げることで、いつどの部品が故障するか予測ができるようになる。予防保全が可能になる。
FLOWSERVEのように装置を提供するメーカーにとってのメリットは、メンテナンスに携わる人員を増やさず、より多くの顧客に幅広いサービスを提供できること。装置を使う製造業側は、きめ細かなサービスを受けて、ものづくりのパフォーマンスを高めることができる。どちら側にも利点のある話だ。
産業用機器にセンサーを取り付けることは珍しくない。そうした中、FLOWSERVEの事例で光る部分はどこか。
物理的なモノに近い場所で情報を取得するだけでなく、ある程度の処理も進めるエッジコンピューティングを実現したことだ。センサーとクラウドの間に、エッジコンピューティングを加えた。
FLOWSERVEのポンプシステムから得られる測定データは、毎秒2.5Mバイトに達する。このデータを直接クラウドに集めて分析しようとすると、問題が2つ生じる。第一に同社は世界60カ国弱にポンプシステムを納入しており、直接管理すべきシステムの数が膨大になること。ネットワークの帯域幅も必要になる。第二に遅延(レイテンシ)が起こり、ポンプの軽微な不調に即応できないことだ。
この2点をセンサーとクラウドだけで解決することは難しい。そこで、ポンプに近い位置である程度の処理を施し、その場で制御をフィードバックする。処理後のデータは上位システムに渡して長期分析にかける(図2)。
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