産業技術総合研究所は、ダイキン工業と共同で大幅な多層化と高速な記録が可能な光ディスク向け記録材料を開発した。時間幅8ナノ秒のレーザーパルスを1回照射するだけで記録ピットを形成可能。Blu-rayディスクの記録速度の3.5倍に相当する書き込み速度を実現したという。
産業技術総合研究所(産総研)の神哲郎氏と鎌田賢司氏は2016年11月30日、ダイキン工業と共同で大幅な多層化と高速な記録が可能な光ディスク向け記録材料を開発したと発表した。多段階多光子吸収とホログラム技術を用いて、時間幅8ナノ秒のレーザーパルスを1回照射するだけで記録ピットを形成可能。これは、Blu-rayディスクの記録速度の3.5倍となる100Mビット/秒の書き込み速度に相当するという。
同材料では、1枚のディスクで最大10Tバイトの記録容量が可能になると見込まれており、HDDや磁気テープなどの記録媒体で必要な空調や定期的なデータの移行が不要になる。これにより、約4割の消費電力削減と二酸化炭素排出量低減が期待できる。
産総研などは今後、「高密度記録と多層化の実証を進めるとともに、無機材料との複合化による耐久性向上も含めたディスクとしての評価、光源の小型化、ドライブ開発など他企業の参画も募り、実用化に向けた研究開発を進める」とコメントした。
光ディスクの大容量化には、ディスクの厚み方向に多数の記録層を持ち、記録容量を増やした超多層光ディスクが有望視されている。超多層光ディスクには、特定の深さの記録層に光記録を形成する必要があり、二光子吸収*)を用いた手法が知られている。
*)二光子吸収:通常の光吸収は1度に1個の光子が吸収されるが、二光子吸収は2個の光子が同時に分子に吸収される。励起速度は励起光強度の2乗に比例し、光強度が強いと効率良く起きるため、集光レーザービームで焦点付近だけを光励起できる。そのため、μm級の空間分解能で分子を励起できるという。
しかし、これまでの二光子吸収を用いた光ディスク向け記録材料は感度不足のため、光記録を形成にピコ秒といった短いレーザーパルスを100ナノ秒の間、繰り返し照射し続ける必要があった。これが、記録速度を制限する要因となっていたという。
産総研などは今回、二光子吸収の強度を増加させる多段階多光子吸収を用いて材料を高感度化。記録材料にホログラムをあらかじめ形成しておくことで、記録信号の再生のコントラストを高めて、光記録形成に必要な照射時間を短く、高速な記録を実現した。
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