今回開発した技術は、長い時間幅のナノ秒パルスを1回だけ照射する。ピコ秒、フェムト秒レーザーパルスでは二光子吸収だけが起こり、その後に発生する熱量が限られていた。そのため、何回も繰り返し照射が必要となり、照射時間が長くなる。
一方で、ナノ秒パルスは、二光子吸収の後に一光子吸収である励起状態吸収が起こる多段階多光子吸収が生じる。励起状態吸収と熱を発生する緩和が繰り返し起こるため、実効的な二光子吸収の強度が増加し、発熱量は桁違いに増加するという。
記録材料中に再生用のレーザー光を高効率で反射するようにホログラムが形成され、多段階多光子吸収で発生する熱によってホログラムを乱すことで記録を形成する。ホログラムは、わずかに乱されただけでも反射光の強度が大きく低下するので、高コントラストの再生ができ、記録に必要な時間をさらに短縮できるのだ。
産総研などは、同原理に基づきBlu-rayに用いられる波長405nmのレーザーで、記録と再生を行った。記録材料にホログラムをあらかじめ作成しているため、再生光を照射すると強い反射光が得られる。8ナノ秒のレーザーパルス照射により記録を形成すると、反射光の強度が低下した。材料中の観測する位置を変えながら反射光を測定すると、記録が形成された場所では反射光の強度が低下し、反射光強度の差として、実用的なレベルのシグナル―ノイズ比(15dB)で記録を再生できたとする。
形成された記録ピットのサイズは深さ方向で2.7μmであり、100μm厚の記録層では20層の多層化が可能。面内方向のサイズは0.7μmで、現状はDVD程度の記録密度である。Blu-rayディスクのレベルまで記録密度を向上できれば、100μm厚の記録層で50層1.25Tバイトの記録が可能になるという。また、開発した記録材料の透過特性から800μm厚の記録層が可能と考えられ、400層/10テラバイトの保管記録向け超多層光ディスク記録が可能になると見込まれる。これは、Blu-ray400枚分が1枚になることを指す。
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