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土に直接埋め込むセンサーが農業のIoT化を支えるIoTデバイスの開発秘話(5)(1/2 ページ)

ラピスセミコンダクタは、土の中に直接埋め込むことができる土壌環境センサーを発表した。酸性度と電気伝導度、温度を計測することが可能。農業のIoT化に貢献し、生産性向上につなげることが期待できる。同社の渡辺実氏に、その特長や開発経緯などについて聞いた。

» 2016年12月22日 09時30分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

“地中のデジタル化”を実現

 「世界初」となる半導体を用いた“地中のデジタル化”を可能にした――。

 ロームグループのラピスセミコンダクタは2015年10月、土の中に直接埋め込むことができる土壌環境センサーを発表した。酸性度と電気伝導度、温度を計測することが可能で、農業のIoT(モノのインターネット)化に貢献するという。

土壌環境センサー (クリックで拡大)

 同社によると、複数のセンサーを1チップに集積化し、土の中に直接埋め込むことができるのは世界初。同社新規事業開拓室の土壌センサープロジェクトでマーケティングリーダーを務める渡辺実氏に、センサーの特長や開発の経緯などについて聞いた。

ISFET方式を採用

 農業の環境モニタリングに取り組むメーカーは既に存在するが、渡辺氏は「一般に入手可能なセンサーで、地上の環境を計測している」と語る。地上の環境も重要な指標だが、“土の状態を把握したい”という現場のニーズも多い。土の状態は大気よりも環境情報のばらつきが大きく、細かく計測するほど生産性向上などにつながるからだ。

 土壌環境センサーは、上記で述べたように酸性度と電気伝導度、温度をリアルタイムに計測できる。渡辺氏によると、野菜の種類ごとに好ましい酸性度の値があるため、適正な土作りを行うには酸性度の情報が必要だ。電気伝導度は土の肥沃度の目安となる。

 現行の酸性度計測は、ガラス電極方式が主流となっている。ガラス電極方式は精度が高い一方で、装置が大きく価格が高いという課題があった。土を採取して評価施設で分析しなければならず、リアルタイムに把握できなかった。

 同社では、酸性度の計測にISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)方式を採用した。ISFETはイオン感応膜を持つFETで、「水素イオン濃度の多い、少ないによって変わるゲート電位を酸性度に変換する仕組み」(渡辺氏)という。

センサー表面部分を親水性膜で構成することにより、土との密着性を向上した (クリックで拡大)

 また、従来は半導体回路内のセンサー部表面を疎水性膜で構成しているため、密着性が上がらず正確な計測結果が得られないという課題もあった。今回、表面を親水性膜で構成し、電極部の構造を最適化することで密着性を向上。これらにより、3つのセンサーを1チップに集積し、信頼性の高い土壌環境の測定を実現した。

 「土や水に入れるセンサーの開発は初の挑戦だったが、半導体製造プロセスの中で疎水性や親水成などを扱っていたため、それらのノウハウが生きた」(渡辺氏)

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